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市ヶ谷モジュールの意味するところ【市ヶ谷モジュール開発記vol.3】

モジュールの形は変わっていますが、分離膜の構造自体は変わっていません(厳密に言えば今後はそちらもどんどん簡単になるのですが)。このモジュールの形が変わることによって、一番変化するのは、使用の際のコストとエネルギーが減ることです。
だから、使える範囲がぐっと広がって、夢物語だった大気中からCO2を取り除くのも夢の話ではなってくることになるのです。
モジュールの構造を変化させることでコストを減らす。これにより使える範囲と分野が広がる。それによって、今まで夢だったことが実現可能になってくるという可能性が、多くの分野で見えてくるのではないかと思います。
最近、空気中からCO2を分離して、こんな風に使っているとったことが話題になることもあります。私もテレビなどでたまに見ることがあります。見ていると、大学とか企業とか、「よく工夫されているなあ」と勉強になります。
たとえば、私が見たのは代表的なのは空気中からCO2を分離して、それをビニールハウスに入れて野菜を育てる、CO2の濃度が高い方が植物の生育がよくなるから入れるというものでした。なるほど、確かにそうです。ただ、これはCO2の利用法で、減らす方向ではインパクトが少し足りないと思いました。回収して使った先生は、もちろん画期的ですし、大きな一歩を示してくれたと思いましたが、それはCO2を減らすという部分では物足りなさを感じました。
CO2回収の課題は、大前提として回収するためにCO2がそれ以上に増えてしまうのは駄目だということです。運用のためのエネルギーはもちろん、製造コストも含めて、考えていかねばなりません。
市ヶ谷モジュールは、今後、高濃度のCO2を出す施設からこれを取り除く方向で真っ先に実用化に向かうと思います。ただ問題なのは、大量回収されたCO2の処理方法です。これをどう処分するかは、今回の新技術に解決する方法はありません。ただ、すでに世界中で何とかしようと提案されているような方法であれば、十分に処理できると思います。たとえば、CCS(Carbon dioxide Capture and Storage=分離・回収したCO2を、地下の貯留層に安定的に圧入する技術)などはその筆頭でしょう。
回収したCO2を再利用する、つまり農業や化学製品の原料に使うということも思い浮かびはしますが、現状では需要も薄く、なにより回収されるCO2は大量になりますので、おそらく地中に埋める方法が、理にかなっているといえそうです。今まで地球を掘って出てきた化石燃料の分を埋め戻さないといけないわけですね。
それには、それなりの労力が要るわけですが、集中的にやればいいのでおそらく採掘するよりはコストはかからないじゃないかと思っています。
 最終的にCO2回収モジュールを設置するには、処理の方法まで確立してないと始まりません。ただ、そちらの分野はCCSなどの技術もあり現状ずっと進んでいます。このモジュールが使われるようになると。今度は逆に回収技術のほうが進んでしまう可能性すらありますが、なんにせよCO2削減は大きく進んでいくと思います。

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