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SFM人類の継続的繁栄 第1章『宇宙における飛び火対処法』

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

爆発の連鎖

第6太陽系の第4太陽系観測用瞬時レーダーに、昨日まではなかった極小さな点が映った。小領域走査型瞬時レーダーでその領域を拡大観測すると、太陽から大きく離れた領域で大きな爆発跡が観測された。さらに捜索範囲を絞って拡大すると、第4太陽系の武器庫や活性物質の研究施設が設けられた第3遠天体が巨大爆発を起こしたことがわかった。すぐに政府に報告し、第3太陽系政府、宇宙政府にも報告した。
 観測を続けると爆発した遠天体の周囲で散発的に小さな爆発が観測された。
 第6太陽系の三政府の要人と関連技術者が集まり、この爆発についての会議が開催された。

「第4太陽系の武器庫である遠天体で巨大爆発が発生した。懸念していたことが起こってしまった。遠天体では活性物質の研究が行われていた。研究員がいなくなりそのまま放置されたので活性物質が漏れ出し、遠天体全体が活性物質に変成され巨大爆発したのだろう」「観測による爆発のエネルギーは遠天体の質量の半分程度だ。この爆発はある程度予測されていたが、不思議なのはその後に散発する小さな爆発だ。活性物質による爆発は、活性化された部分全部がエネルギーに変換するので、爆発すれば活性物質はすべてなくなり、破片が他の天体の爆発を引き起こす事はない」
「しかし今回は周りで小さな爆発が散発している。周りで散発している小さな爆発は遠天体の爆発の影響に間違いないが、理由がわからない」

 天体爆発に困惑した面々によって、それでもあくまでも冷静に意見交換を行っていた会議メンバーであったが、そんな言葉が交わされる最中に入った報告によって様子が一変した。

――遠天体から数万キロ離れた小さな天体が大爆発した。

との情報が入ったのである。

「今度の大爆発は、その天体が活性物質に変換された事による爆発に違いない。あれほど小さな天体に活性物質の施設があるとは考えられない。非常に考えにくいが、遠天体の爆発の破片に活性物質が付着していて、その活性物質により小天体が活性化され爆発したのかも知れない」
「ということは散発した小爆発も、遠天体の極近くの非常に小さな天体に活性物質が付着した破片が衝突し、小天体自体が活性化され爆発したのかも知れない。もしそうだとすると最悪の事態だ。爆発した天体の破片により天体の活性化が連鎖してしまう」
「遠天体では色々な活性物質の研究が行われていた。活性化の速度は遅いが爆発しやすい特殊な活性物質を開発したのかもしれない。それなら先に活性化した部分が爆発し、活性化途中の破片が飛び散りながら活性化することも考えられる。何れにせよ最悪の事態だ。このまま放置していると第4太陽系の天体が次々と爆発してしまう。太陽も活性化され爆発するかも知れない。太陽が活性化爆発を起こせば、数百光年以内の天体は蒸発してしまうだろう。最終的には宇宙全体がなくなるかもしれない」
  
 検討結果が他の政府に連絡され、緊急の三者会議が行われた。

緊急会議

 担当技術者が一連の説明を終えた直後に緊急情報が入った。
 
第6:「いま、第6太陽系の四足人政府から情報が入った。四足人は活性物質についてはプロ中のプロだ。彼らの報告によると、今回の現象に符合する、『活性速度が遅く爆発しやすい不安定な活性物質は、特殊な物質の配合により作ることができる』との事だ。ただし、そのような活性物質は活性後数日で普通物質に戻るとの事だ。これが事実だとすると、遠天体の爆発の破片が直接第4太陽系の中心部の天体に落下しても、そのときには普通の隕石と同じになる。問題なのは遠天体の爆発の破片が内側にある天体に衝突し、その天体が活性化し部分爆発し、その天体の破片が活性化しながらさらに内側の天体に衝突する、というように次々と内側の天体に飛び火する事だ」
第3:「飛び火を食い止めるには防火帯をつくるのが鉄則だ。我々第3太陽系は今までの世界のほかにバーチャル世界も作った。すでに50億人がバーチャル世界に移住しバーチャル世界を開拓している。至急彼らに第4太陽系の人体に乗り移ってもらう。第4太陽系の第4地球には高速宇宙船もあるだろうし活性爆弾もあるはずだ」
第6:「どの天体を消滅させれば防火帯になるか、我々の階層型コンピュータで調査する」
宇宙:「残された時間はどのぐらいあるのか?」
宇宙-2:「遠天体から第4地球まで隕石が飛び火してくるまでには早くても2万時間はかかる」
第3-バ:「第4太陽系には防火帯を作るために必要な色々な設備やシステムがそのまま残っているはずだ。至急第4太陽系に10億人を派遣し防火帯の準備を始める」
第6:「瞬時レーダーで爆発の連鎖の状況を詳しく観察している。間もなく活性物質から普通物質に戻る時間が正確にわかるだろう。正確な時間がわかれば第4太陽系のどの領域を防火帯にすれば良いか計算できる」
第6:「四足人によると、例え防火帯作りに失敗し連鎖が止まらなくても、太陽には問題がないということだ。太陽の表面に活性物質を含んだ破片が到達する前に活性能力を失うと言っている。この手の活性物質は超高温には弱いようだ」
宇宙:「太陽が大丈夫なら他の太陽系には大きなダメージはないだろう」
第3-バ:「防火帯作りにベストを尽くし、やるだけやってから第3太陽系に避難する」

 会議が終わると、第3太陽系のバーチャル人10億人が第4太陽系に放置されている人体に乗り込んだ。
各政府による情報の支援を受け、第4太陽系に放置されていた多数の宇宙船に大量の活性爆弾を載せる。そして、計算された領域にある天体を消滅させ、防火帯を作った。
作業が終了すると、万一の場合に備え、10億人全員が第4太陽系を離れ第3太陽系に戻った。あとは様子を見るしかなかった。
しばらく時が経った。爆発の連鎖はその後、一度も観測されなかった。運よく防火帯が効を奏し、爆発の連鎖は食い止められたのである。

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