9月になって少し涼しくなると、ふと思ったりするのが「今年も早いもので、あと4ヶ月か」などといったこと。季節の変化や暦の変化によって、わたしたちの気分や感情、思考というものも影響を受けているのだなと感じるものです。
――今年の夏は暑い!
なんだか毎年同じことを思っている気がしますが、2024年の夏は実際にまた異常でした。福岡の太宰府では1ヶ月以上も猛暑日を記録したとのニュースが流れていましたが、台風や線状降水帯、気温や水温の変化による作物や海産物への被害など、環境変化による影響はとてつもないものがありました。
環境というものはさまざまなもの同士が、互いに影響しあって刻々と変化し続けています。地球には昼と夜があって温度も変化しますし、大気があって常に風となって流れています。同時に赤道付近では遠心力が大きくなるため物体が少し軽くなったりしますし、月の引力によって海も満ち引きします。そして地球上には目に見えない、人には感じることのできないエネルギーが飛び交っています。また人はそれぞれの分かり方に基づいて、それぞれ行動しますし、それに影響を与える情報も同じように駆け巡っています。
必然同士が影響し合うとき、その先に何が起こるのかを瞬時に計算することは簡単ではありません。そして数多の影響を正確に把握することができなければ、いくらたくさんの必然を知っていても未来がどうなるかは正確には分からないのです。
もしもこのような条件に関与する他の影響をすべて把握することができれば、それを計算することで新たな必然を組み立てることは理論上できるでしょう。今世紀のはじめ、海洋科学技術センターとNECによって共同開発された『地球シミュレーター』は、当時では世界最速となる演算処理機能を備えたスーパーコンピューターでしたが、海流や大気といった気候変動をある程度の精度で予測するためにですら、このくらい特別な演算能力が必要になります。
もちろん、その予測のためには計算材料となる莫大なデータがさらに必要になりますので、それを集めるのも簡単なことではありません。昨今、ビッグデータとその解析は当たり前のように行われるようになってきていますが、これは莫大なデータをこれまでよりも手軽に集められるようになったからです。スマートフォンをはじめとしたあらゆるデジタル機器端末が広く普及し、それらがインターネットを通じ自動でデータを集めてくれるようになったのは、これまで見えていなかった影響をデータとして可視化する上で画期的なことでした。
ただ、それでも現在の人類の技術では完全な未来予測はできません。たとえば地震予測は、この地域で大地震が将来起こるだろうということならば予測できているといっていいでしょうが、いつ起こるかまでは予測できません。
今年の8月、大分で起きた地震によって、「近いうちに、南海トラフ巨大地震が起きるのでは?」という憶測がなされ、これが公に発表されると大きな影響を及ぼしました。実際に南海トラフ巨大地震が起こらなかったのは幸いでしたが、旅行観光業界ではキャンセルなどが相次ぎ、この発表は大きな影響をもたらせました。これは自然の影響というよりも、人が起こした影響といえるかもしれませんが。
地震は、「どこで」の予測に必要なデータを集める技術はあっても、「いつ」を予測するために必要なデータを集める技術はありません。そのため、ある場所で地震が起きることは必然だといえても、いつ地震が起きるかを必然として示すことができないのが現状です。
地震のメカニズムについては私も詳しいことはいえませんが、簡単にいえば地殻に蓄えられたエネルギーが開放されたときに起こるという認識で間違いないでしょう。ちょうどバネに蓄えられたエネルギーが、手を離すと開放されるのと同じような仕組みです。ただ、どんなきっかけで、なにの影響でその手が離れることになるのかは分かりません。
思い返せば、今年の元旦には能登半島で大地震が起こり、多くの方が被災されました。地震の予測は私が生きているうちには難しいでしょうが、日本という国では地震は珍しいことではありません。「いつ」の予測が難しいのならば、「いつも」地震に備えて、これを災害にしないような工夫をしていく必要があるのだと思います。