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SFD人類の継続的繁栄 第4章『第3衛星を手に入れろ』

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

第3衛星における諸問題

 第2衛星では、「量はわずかだがソーラーパネルに必須な物質が存在する可能性が高い」と月から情報が持たされた鉱山の探査を行い試掘した。
月から持たされた情報は正しかった。それなりの量の物質が採掘でき、ソーラーパネルが量産された。電力の問題はひとまず解決し、第2衛星の自治政府は新たに4000人を誕生させ、人口は5000人となった。
月の天文台から持たされた観測情報により、この星の資源は少ないが、小さな第3衛星は宝の山であり、再接近時にはこの衛星と第3衛星との距離がわずかである事がわかっていた。
自治政府は技術者を交え、第3衛星から資源を運ぶ方法について議論を行った。

「第3衛星を開拓し、鉱山から採掘した資源をこの星に運ぶ事はできないか」
「ロケットで運ぶのではあまりにも効率が悪い」
「第3衛星がこの第2衛星の孫衛星なら、宇宙エレベーターを使う手もあるが、孫衛星ではない」 
「あの衛星は非常に小さいので、原爆で軌道を変えて孫衛星にできないか」
「自転を無くし、静止孫衛星にできれば宇宙エレベーターは簡単にできる。あの衛星は非常に小さいので自転を止めるのはできるのでは」

第3衛星を第2衛星の孫衛星にする事が可能か否かを技術者が計算した。計算の結果、孫衛星にはできるがこの星の引力、自転周期の関係で静止孫衛星にはできない事がわかった。
 第3衛星の資源を活用できなければ、この衛星をこれ以上開拓する事は不可能である。ソーラーパネルは沢山製造したので、当面電力不足の心配はない。しかしこれ以上開拓する事はできず、このままでは単にこの星に5000人が生存しているだけである。
 自治政府は第2地球政府に、現状とこの先の見通しについて報告した。第2地球政府もこのまま放置しておくのはまずいと判断し、プロジェクトに解決方法を検討するように命じた。

ランディング構想

原爆技術者達が、次のターゲットとして原爆エンジン構想を検討している事は、すでにプロジェクトに報告されていた。プロジェクトと原爆技術者により自由討論が行われた。

「原爆エンジンを第3衛星から第2衛星への資源の運搬に利用できないか」
「原爆エンジンといっても、まだ構想段階で開発の見通しは立っていない。たとえ開発できたとしても、原爆エンジンは超強力なイオンエンジンのようなもので、宇宙船での長距離航行には役立つが、近距離の高速運搬用のエンジンとしては使用できない。今は微小原爆砲の可能性を検討している。微小原爆砲を利用すれば第3衛星の軌道の変更ぐらいは可能だろう」
「第3衛星を第2衛星の孫衛星にする事はできるのか」
「再接近した時に超微小原爆砲を連発すれば多分可能だろう。何しろ第3衛星は非常に小さい」
「孫衛星にできても静止孫衛星にはできない。つまり宇宙エレベーターは作れない」
「いっその事、第3衛星を第2衛星と合体させてしまえば良いのでは」
「再接近した時、第3衛星の公転を減速し、第2衛星の引力圏に入れれば、第3衛星は第2衛星に衝突し第2衛星と合体する」
「第3衛星が非常に小さく、第2衛星の引力も小さいが、第3衛星が第2衛星にそのまま衝突すれば、ものすごいエネルギーが発生し、第2衛星は大きく損傷する」
「基地の反対側に衝突させれば基地へのダメージは少ないのでは」
「それでも第2地球に小惑星が衝突した時のようなダメージを受け、第2衛星には当分人が住めなくなるだろう」
「衝突ではなく第3衛星を第2衛星にソフトランディングさせる事はできないか」

 プロジェクトの技術者と原爆技術者による計算と検討が行われた。

「幸いにも第3衛星はほとんど自転していない。原爆砲を設置して公転を減速する事ができる。公転を減速させるには公転方向に砲弾を発射させるので第2衛星への直接的な影響はない」
「ソフトランディングの時が問題だ。第2衛星に向けて発射しなくてはならない」
「発射というと実際に弾を撃つのか」
「現状の技術ではそうせざるを得ない。原爆は爆薬として使用する事になる。非常に高速で小さな粒弾が大量に第2衛星に突き刺さる事になる」
「第3衛星のランディングによる衝撃も心配だが、微粒弾による影響も心配だ。無論、微粒弾が砂粒ぐらい小さければ問題はないが」
「そのためにランディング場所を第2衛星のどの場所にしたら良いか、月の望遠鏡で調査してもらおう」
「微粒弾を上から第2衛星に向かって発射すると、その勢いで第2衛星が惑星側に移動してしまうのではないだろうか」
「それは逆だ。第3衛星を第2衛星上に落下させるといっても、厳密には2つの衛星が互いの引力で引き合う事になる。実際には第2衛星はわずかだが惑星から遠ざかる事になる」
「計算では合体は可能との結果が出たが、後はダメージをいかに小さくできるかが問題だ」

 月の天文台でランディング場所選定の観測が行われた。ランディング場所の選定基準は次のようである。

  1. 必然的に第3衛星が公転している直下の狭い帯域。
  2. 基地とできるだけ離れている事。
  3. 第3衛星ができるだけ深くのめり込み、衝撃を吸収できる軟弱な地盤である事。

 上記の選定基準を満たす3箇所が選定され、隊員が現地調査におもむきランディング場所を決めた。
 ランディングの場所が決まったので、第3衛星の何処に原爆粒砲を設置するか、どのタイミングでどれだけの原爆粒砲を撃つか決まった。またどの程度の衝撃になるか計算した。計算結果に基づいて、衝撃によるダメージと対策について検討を行い、次のような結論に達した。

  1. 計算通りに行かず失敗する可能性は否定できない。場合によっては基地が壊滅する恐れがある。万一に備えて第2衛星の全住民の記憶は月の記憶記録装置に記録しておく。
  2. 大量の灰が舞い上がる恐れがある。第2衛星は真空に近いので舞い上がってもすぐ落下してくるが、引力が小さいので最悪4ヶ月、太陽光が遮られる恐れがある。この対策として大容量電池を備えておく事。
  3. 免振棟を建設し、重要な機械装置や部品はそこに保管しておく事。
  4. 住民は建物が倒壊する場合に備えて、何もない平地に避難する事。

決行の日

 いよいよ決行の日が近づいた。最接近の3日前に、月から2人の原爆技術者と6人の作業隊員が、多数の原爆砲や原爆粒砲、装置類を搭載した大型ロケットに乗り、第3衛星に到着した。隊員や技術者には、ほとんど引力のないこの星での活動に備えた体の調整が施されていた。
 公転減速用原爆砲と、ランディング用原爆粒砲との2つのグループに別かれ、それぞれを敷設した。引力がほとんど無いこの星での作業は予想以上に難航し、ロケットで脱出する余裕がなくなった。仕方なくロケット内に配備されていた移動室から月の人体に乗り換え脱出した。第3衛星には予定外の8体の人体と大型ロケットが取り残された。

第2衛星に小さな宝の山の第3衛星をソフトランディングする様子と合体した後の様子

 原爆砲や原爆粒砲の操作は第2衛星から行うように計画されていた。ソフトランディングには微妙な操作が必要である。このためソフトランディング地点からあまり離れていない地点に操作員用のシェルターが設けられ、ここから操作するように計画されていた。
 減速用原爆砲が作動し、ほぼ予定速度で予定コースに入った。第3衛星から発信される高度計と速度計のデータはシェルター内のコンピュータに取り込まれ、コンピュータの指示により原爆粒砲が連射された。しかし第3衛星には計算外の大型ロケットが残されていた。このため第3衛星の重量はほんのわずか増加していた。このわずかな違いがランディングに微妙な影響を与え、ランディング地点が少しずれ、大量の灰が発生した。
 プロジェクトの技術者は、成功した事に安堵したが、大型ロケットの重量を考慮しなかった事により、ランディング地点が少しずれた事を悔やんだ。技術者達は衛星という言葉にだまされていた。「衛星ならばロケットの重量など関係ない」という先入観があったからだ。第3衛星は、衛星というにはあまりにも小さかった。
 原爆技術者達はこの成功に大満足だった。開発した原爆粒砲は計算どおりに作動した。漠然と考えていた原爆エンジンの開発に光が差してきた。
 また、自治政府はこの成功に大喜びだった。宝の山である第3衛星を丸ごと手に入れる事ができたのだ。この宝の山を活用すれば第2衛星の大開拓が可能になり、人口も大幅に増やす事ができる。しかし今は喜んでばかりはいられない。やらなくてはならない事が山のようにある。
 担当者が基地の様子を調査した。ランディング時に多少のゆれは感じたが、建造物には大きな被害は無かった。問題は降灰対策である。
 月の天文台から降灰について次のような連絡が入った。

  1. 発生した灰は予測より1桁多い。
  2. 真空に近いので降灰が舞うことはないが、降灰が落ち着き、太陽光が射すまでには6ヶ月ほどかかる。
  3. 操作員のいるシェルターは無事だが、降灰が多く、まもなく通信が途絶える。

 操作員がいるシェルターには移動室はなかった。無論操作員の記憶は記憶装置に保存されているが、保存された記憶を用いるのは最後の手段である。
プロジェクトの責任者はシェルターにいる操作員に、降灰がひどい事、まもなく通信が途絶える事を連絡し、できるだけ早く救出するので自分で電源を切りシェルターの中で待機するように命じた。

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