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SFM人類の継続的繁栄 第3章『新三者会議の誕生』

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

第4太陽系奪還作戦

 第4太陽系の500億の住民を閉じ込めたクラウド装置を埋め込んだ穴の周りには、宇宙政府から派遣された200人の隊員が第5太陽系の副脳を持つ人体に乗り込み、クラウド装置監視施設の建造に従事していた。
 そして、穴の周りで作業していた20人に第4太陽系の工作員であるM氏が乗り移った。乗り移られた20人は予め決められたハンドサイン通りに耳に手を当てた。一斉に耳に手を当てた隊員を見て、他の隊員が近づいてきた。
 耳に手を当てた隊員が穴の縁に集合した。それを見ていた他の隊員も穴の周りに集まり耳に手を当てた。耳に手を当てた隊員の多くが耳から手を離し、離れたところで働いている隊員に駆け寄り、「面白い音が聞こえる」と、耳に手を当て穴の周りに集まっている隊員を指差した。次々と別の隊員も穴の周りに集まり、M氏が乗り移った。
 建造中の監視施設の中にいる隊員も半ば強制的に穴の周りに集められ、監視施設建造に従事していた全隊員にM氏が乗り移った。乗り移った副脳の中に残っている元の隊員の記憶を調べ、ここが第5太陽系である事、クラウド装置は地下深くに埋め込まれている事、5km先では第5太陽系の住民を閉じ込めたクラウド装置があり、そこでも同様の監視施設建造の作業が行なわれている事、監視施設建造のためにいろいろな装置が備えられ、増幅器や通常電磁波通信装置がある事、もわかった。
 穴の周りから漏れ出た信号を増幅し、5km先の建造現場に送信し、そこで働く200人の頭にも乗り込んだ。
 次々と頭に乗り込み、第5太陽系で働く5億人全てがM氏の記憶と性格を持った。

 早速500億人が閉じ込められているクラウド装置の取りだし作業を行った。取り出されたクラウド装置は急きょ地上に作ったシェルターに格納し、インターネットと接続した。接続したインターネットによりM氏の代表がクラウド装置の中のM氏に、作戦が成功したことを報告した。
 制御領域と広大な居住領域が統合され、全体が外部クロックで動く元のクラウド装置に戻された。
 インターネットを介し、第4太陽系の状況を調査した。第4太陽系は遠天体の爆発に起因した特殊活性物質の爆発の連鎖を食い止めるために、第3太陽系から10億人のバーチャル人が第4太陽系人用の人体に乗り込み防火帯を作り、その後、万一の爆発に備え全員が第3太陽系に帰還し、現在は誰もいない事がわかった。
地下深くのシェルターに埋蔵されている脳保管庫もそのままで、脳保管庫には外に出ることのできない500億人の脳がそのまま保管されていることも確認できた。瞬時インターネットもその他の重要インフラもそのまま残っている事もわかった。今ならこのクラウド装置から抜け出し、元の生活に戻ることが可能である。
第5太陽系は5億人のM氏に任せて、基のM氏を含めた500億人全員が第4太陽系に戻ることを決め、速やかに実行した。
 遠天体を失い、防火帯により一部の領域が空白になったが、その他には大きな問題はなく、第4太陽系はほぼ完全に元の状態に戻り、500億人の住民は元の暮らしを取り戻した。

第12回三者会議

M氏による第4太陽系のリアル奪還作戦が終わった頃、第3太陽系で第12回三者会議が急遽開催された。当然、その動きに反応してのものであったが、正確な情報はつかめていない中、会議は始まった。

宇宙:「第5太陽系に4億人の隊員を派遣したが、その後の連絡内容に不自然な点が見られる。何か予想外の出来事が起こったのではないか心配だ。インターネットの動きにも不自然な動きがある」       
第6:「我々が応援に派遣した1億人も同様だ」 
第3-バ:「我々は第4太陽系に10億人の隊員を派遣し、防火帯を作り、その後は万一の爆発に備え全員退去した。その後には誰もいないはずだが、最近、第4太陽系のインターネットの動きが急に活発になってきた。理由がわからない」
第6:「我々の天文台では第4太陽系の爆発の連鎖に集中して観測していたが、今回の連絡を受けて急きょ第4地球の観測を行った。人の有無まではわからないが確かに何かが活動しているようだ」
宇宙:「第5太陽系に派遣した隊員の様子がおかしいので、調査のための別の隊員を派遣した。しかしその隊員の様子もおかしい。第5太陽系に埋めてある第4太陽系の住民500億人を閉じ込めてあるクラウド装置と何らかの関係が有るに違いない。何らかの方法で、第4太陽系の住民を閉じ込めたクラウド装置の中から、我々の隊員の脳を乗っ取られたのかもしれない」
宇宙-2:「もしそうなら大事態だ。我々が派遣した隊員全員が第4太陽系人に殺された事になる。今、第5太陽系で働いている人間が全員第4太陽系側の人間だとすると、クラウド装置はとうに掘り出され、インターネットに接続されているだろう。クラウド装置から全住民が脱出して第4太陽系にもどり、第4太陽系は元通りなっているだろう」
第3:「これで全ての不自然な動きの説明がついた。しかしながら、その対応はすぐには決められない。第4太陽系の調査を続けながらしばらくは静観するより方法はない」 

新たな指導者の誕生

 緊急会議が終わった頃、一方、第5太陽系で作戦を完了したM氏たちは、今後の方策を巡って意見を交わしていた。

「我々、元は同じ1人の人間からなる5億人は、この第5太陽系の管理を任された。我々は、元は1人だが既に5億人の別々の人間となっている。しかし過去の記憶や知能や性格は今でも似ているので、どうしても同じような考え方になってしまう。この問題をどのように解決しようか」
「ここにいる多くの人も同じように考えていると思うが、最初に解決しなければならない問題は、第5太陽系の住民を閉じ込めてあるクラウド装置をどのようにするかの問題だ。クラウドに閉じ込められている第5太陽系人も、我々が考えた事と同じような事を考えていると思うべきだ。彼らも地底から我々の頭を乗っ取ろうとしているかも知れないし、脱出するための別の方法を考えているかも知れない。今のまま放置しておくのは非常に危険だ」
「電磁波を耳で受信するのが最も危険だ。電磁波をシールドするのは簡単だが、我々が互いに話しあっているのも電磁波を使用している」
「それではあの手を使おう。昔どこかで使われた、例の粉を使った音声会話の方法だ。少々不便だがあの方法なら問題ない」
「当面はその方法を使用する事にして、クラウド装置を掘り出した後、彼らとの会話方法については通信を使用するしか方法はない」
「それは問題ない。こちらから送信する場合は直接行い、彼らからの受信はフィルターを通して行えば問題ない」

 早速、微粉音声会話機能つき電磁波シールドヘルメットを製造し、全員がヘルメットを被った。第5太陽系人が閉じ込められたクラウド装置を掘り起こし、通信線を接続し、フィルターを介し彼らと会話した。彼らも元々はリアル人だったのでバーチャル世界からリアル世界に戻ることを希望していた。 
 第4太陽系の政府とM氏らの代表との間で処理方法について検討し、彼らの基本本能の中の闘争心を40%に削減してから元の世界に戻す事にした。
 第5太陽系の瞬時通信網を復旧させ、闘争心を大幅に削減するソフトを介し、彼らの脳データを元のそれぞれの脳器に入れ戻した。これにより第5太陽系は、穏やかになった30億人が元の生活を取り戻し、5億人のM氏らの下で平和を掲げる国家になった。

 M氏らにとって解決すべき大きな課題がまだ1つ残っていた。1000億人が居住する宇宙政府のクラウド装置とその自治政府のクラウド装置の問題である。第5太陽系政府の協力の下に2つのクラウド装置をインターネットから切り離した。
 宇宙政府のクラウド装置に通信線を接続しフィルターを介して会話した。宇宙政府も自分達の置かれている立場を完全に理解し、第5太陽系のインターネットから離れて宇宙の別の領域に孤立することを希望した。彼らの希望を受け、M氏政府と第4太陽系政府と第5太陽系政府による新三者会議が第4太陽系で開催された。

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