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SFC人類の継続的繁栄 第2章『6名からの再出発』

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

第3暦2000年、第4暦 元年

 太陽系が消滅し、消滅した太陽から70光年離れた第2太陽の惑星上に、第4世代の人類というべき6名だけが奇跡的に生き残り降り立った。
 彼ら6名は、好奇心と知的欲求に満ちた自由を愛する人物であったが、今となっては唯一の人類であり、その存続を否応なく担うこととなった。その重大な責任が彼らの双肩に重くのしかかっていた。
第4世代の人類が開拓する事になる第2地球であるこの惑星には、水や空気はない。第2太陽から放出される光や放射線は、空気に遮られる事なく直接地上に照射する。
 第2太陽の放射線から体や機材を守るため、小さな基地を建造した。地上はほとんど真空状態で、風がないので簡易な構造で十分である。簡易な基地の中に、地球から運んできた貴重な機材や部品を運び込んだ。
 人の材料は、地球から運んだ1000人分のICチップと周辺回路部品、バッテリー10個、カーボンは宇宙船を分解して得られた材料の中から100人分を確保した。
バッテリーの数に合わせ、新たに10人を誕生させ、3カップルからなる6人家族と新たに誕生した5カップルの16人となった。この16人のミッションは第2地球を開拓し、人類の継続的繁栄の理念の下、第4世代の人類を繁栄させる事にある。
第3世代の人類が最初の26人から出発したように、リーダー、サブリーダー、仕事の分担を決める必要がある。16人の中から、それにふさわしい能力の4名を選出し、名前も第3世代の出発時にちなんで、リーダーを阿部、3名のサブリーダーを上田、井上、江田と命名した。
 また阿部リーダーを長とする生活班、井上サブリーダーを長とする技術班、上田サブリーダーを長とするインフラ班、江田サブリーダーを長とする探検班の4つの班を設置した。
 先ずは第2地球となるこの惑星を詳しく調べる必要がある。宇宙船からの観察によりほぼ全容はつかめていが、技術班で詳しく測定した結果、第2地球の主なスペックは次のようなものだった。

1.質量は地球の約半分
2.半径は地球の約80%
3.引力は地球の約60%
4.自転軸は公転面に対しほぼ垂直
5.自転周期は10時間
6.公転軌道はほぼ真円
7.公転周期は約1万時間
8.地表の大気密度は地球の1万分の1
9.赤道上のこの基地の温度は、最高気温50度、最低気温0度

第2太陽のスペックについてはほぼ太陽と同様だった。
1日を自転周期にあわせ10時間、季節はないので消滅した故郷の地球に合わせて、1年を8760時間とする事にした。

第4世代人類の繁栄に向けて

 大気がほとんどないにも関わらず意外にも1日の温度差は小さかった。1日が10時間と短いためのようだ。1日の温度差が少ないため、風化はあまり見られず、地表面は硬く、地表の多くの部分は車両が使えそうである。
 カーボン変成機と半導体製造装置を用いてソーラーパネルを製造し、ソーラーパネルを動力とする簡易な電気自動車を1台製造された。
 カーボン変成技術が進展し続けたとは言え、カーボンだけではバッテリーを作る事はできない。代わりにジャイロ型蓄電池を製造した。ソーラーパネルで発電し、余った電力をジャイロの回転エネルギーとして蓄電するものである。カーボン変成技術の進展により、非常に強い構造材を作る事が可能なので、ジャイロ蓄電池はある程度実用的なものだった。しかしながら電気自動車がジャイロ蓄電池で走行できるのは、せいぜい1時間と短かった。
 探検班はソーラーパネルとジャイロ蓄電池を使用した電気自動車で、基地から半径500kmを探査した。バッテリー製造に必要な金属を探さないと、これ以上人を誕生させる事は不可能である。カーボンを見つけなければ、インフラの整備や基地の拡大、人体の大量製造は不可能である。
 100日かけてやっと小さな鉱山を発見し、わずかだが黒鉛も見つかった。幸運にもこの鉱山の先に多くの鉱脈が連なっていた。そこで基地ごと、この地域に移転することが決まった。
基地の移転が無事に完了すると、この基地を基点に周辺探査が行われた。結果、4つの有望な鉱山が発見された。そのうちの1つに大量の黒鉛が埋蔵されていた。バッテリーに必要な貴重物質も微量だが黒鉛鉱石に含まれていた。
取り出した黒鉛から中型の重機が製造された。中型重機により採掘の効率は上がり、バッテリー1000個分の貴重物質が確保されたが、たった16人ではこれ以上何もできなかった。

――人を増やす事が最優先である。

 そんな意思決定がされると、急ピッチで1000人の人作りに向けての作業が始まった。鉱山から採掘した黒鉛により1000体の人体が製造され、貴重物質を使用しバッテリーも1000個製造された。脳にあたる記憶の入った半導体チップは、地球から1000人分持ってきていた。

 それから2年、ようやく1000人全員を誕生させる事ができた。
 各班に、新たに誕生した1000人が配属される。その半数はインフラ班に配属され、新たな鉱山の探査と鉱石の採掘作業に従事した。彼らの働きにより、半導体チップに必要な貴重物質の鉱山も見つかり、新たに1万人分の人の材料が採掘できた。
 この1万人の誕生には無論地球から持ってきた1万人の記憶を使用した。加えて、カーボン変成機により、部材が製造されると、基地の拡張も行われた。
第2地球の開拓に必要な車両等の機械も増産した。新たに人を誕生させるために必要な半導体チップも無事に生産を開始。その結果、翌年には人口は3万人にまで達した。この中から優秀な技術者も多数誕生し、カーボン変成機や半導体製造装置の新規製造に向けての開発にも着手した。
 また超大型の反射望遠鏡も製造した。ほとんど大気のない第2地球から、超大型望遠鏡による宇宙の観察には大きな成果が期待できる。
このように、第2の地球上で第4世代の人類の繁栄が始まっていった。

第4暦200年

 第2の母星に降り立って200年。第4世代の人口は30万人に達し、政府や各種機関、各種ルールも整備された。この頃の政府のトップである大統領は上田氏だった。上田政権は、やっと第4世代の人類の仕様に着手する余裕ができ、〔第4世代人類仕様検討プロジェクト〕を発足させた。
人類仕様検討プロジェクトが検討を開始した。
 頭脳については、このまま第1世代の人類なみに留める事にした。これ以上に深く考える頭脳を持たせると、人類は無論の事、宇宙の存在意義も否定し、宇宙の消滅をも考える人が出現するかもしれない。頭脳についてはそれ以上の改良はやめて、体の改良に集中する事にした。
現状の体には多数のセンサーが備えられ、五感に近い感覚も持っている。ただし嗅覚については、もともと息をする事はなく、また真空中では意味がない。
聴覚については、第3世代の人類が宇宙居住区で生活する際に開発した、音を電波に変換し、耳で受信する真空中の会話システムがある。この会話システムは、空気中での会話とほとんど同じ感覚で会話できるようになっているので、聴覚についても現状のままとする事にした。
味覚については、現状の人間の食料は電源であり、その電源の取り方に多少の工夫があるものの、担当者自体、第1世代、第2世代の食事の知識はなく、また、口から物を摂取する事はできないので、当然、酒や麻薬を楽しむ事もできない。これ以上の工夫のしようもないので改良を見送る事にした。
視覚については、すでに第1世代、第2世代の人類以上に充実して備わっており、風景や絵画などを見て感動したり、逆に嫌悪感を抱いたりする、脳との連動機能も十分に備わっていた。
 残るは触覚のみである。体中のセンサーを工夫する事により、真空中であろうとなかろうと、触覚は大幅に改良する余地がある。第1世代、第2世代の人類と比較して、失った感覚、あるいは大幅に機能低下した感覚をおぎなうには、触覚の改良が手っ取り早い。
 現状の触覚は、体に取り付けた数百にのぼる独立した個々のセンサーが担っている。これらのセンサーで検出した信号が脳に伝達され、脳で信号の情報を処理するという仕組みだ。手で物をつかむ時の感覚も、椅子に座ったときの感覚も、体が傷ついた時の痛みも、性交による快楽も、全て独立センサーの信号を脳で処理し、視覚や聴覚とも連動し、感覚を得るようになっている。 
 はじめは単に独立センサーの数を追加しようと考えていた。しかし、独立センサーを3倍にしたところで、その分緻密になるだけである。背中や大腿部の裏側など、あまり重要度の低いところは独立センサーの追加にとどめ、性感帯などに対しては独立センサーの替わりに、面状分布センサーを使用する事にした。
 面状分布センサーとは文字通り、面状にびっしりと微小センサーを分布させ、微小センサーから出力される大量の情報を統合するプロセッサーを備えたものである。センサーが面状となり、プロセッサーで統合した信号を脳に送るため、神経の数は少なくなるが、プロセッサーと脳の間で複雑な通信が行われ、微妙な感覚を得る事ができ、これにより、第1世代、第2世代の人類に比べ、触覚は大幅に改良する事が可能となる。
 このように検討した結果、五感は次のようにする事になった。

 嗅覚:現状のまま  なし。
 聴覚:現状のまま 第1世代、第2世代と同等。
 味覚:現状のまま 第1世代、第2世代に比べ大幅に劣る。
 視覚:現状のまま 第1世代、第2世代より優る。
 触覚:大幅に強化。 特に性感帯などについては第1世代、第2世代の性能を大幅に上回る。

なお、面状分布センサーは、単に異性との関係に利用するだけでなく、ある部分に触れられるとリラックスしたり、陽気になったり、ある部分をある方法で刺激すると麻薬を使用したような感覚になるなど、主に快楽を得るための各種手段にも使用できる。たとえば同僚と宴会を開き、充電器を持つ感触により、陽気に盛り上がるような事も十分に可能となる。
 五感以外の機能については、引力が少し小さいための小修正が行われた。その他の方式や制度、体を乗り換えられる方式、ステータス制度、男女カップル制度、循環家族制度、100年前の記憶は消失する方式等は、従来の方式をそのまま踏襲する事にした。

 第4暦220年、検討結果に沿って30万人に五感の改良手術が行われた。

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