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SFE人類の継続的繁栄 第8章『5世代人類のミレニアム』

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

活性化エンジン構想

「原爆に比べ活性爆弾は桁違いに強力で、しかもAB2物質の配合割合により目的に合わせた特性を引き出しやすい。理論的には原爆エンジンとは桁違いの強力なエンジンを作れるはずだ」
「しかし爆弾と違い、爆発エネルギーを制御しながら連続的に爆発を行わなくてはならない。爆発というよりエネルギーの連続放出だ」
「エネルギーの連続放出という意味では原爆から発展した原爆エンジンも同様だ。原爆エンジンの場合、質量のエネルギー変換率が小さく効率が悪いが、もし活性化エンジンができた場合、エネルギー変換率はいかようにも調整できる。まさに宇宙を自由に航行できる夢のエンジンだ」
「無論、さらに強度を上げることは必要だがエンジンの基本構造は原爆エンジンと同じだろう。エンジン内で燃料を連続爆発させ、そのエネルギーの噴射方向を後方に揃えるための技術も同じだろう」
「問題はどうやってAB2物質をエンジンに送り込み連続的に爆発させるかだ」
「エンジンのスタート時にはAB2物質をエンジン内に送り込む必要があるが、その後は通常物質を後部から送り込めば良い。AB2物質の混合により生成された活性物質に通常物質が接触すると通常物質が活性物質に変換する。ただしかなり高速な変換速度にする必要がある。変換速度が速いと安定度が高くなり爆発しにくい。簡単な問題ではない」
「変換速度と安定度は後回しにして、エネルギー変換率について考えよう。エネルギー変換率は高ければ高いほど良いのか。あまり高すぎると噴射させる物質がなくなってしまう」
「わずかでもあればそれを限りなく光速に近づけられるので効率がよくなるのでは」
「しかし変換効率100%の場合は物質が全てエネルギーに変わってしまう。すると噴射させる物質が無い。無いものをいくら高速で噴射しても意味がない。最大の変換効率がどこかにあるはずだ。多分98%ぐらいではないだろうか」
「爆弾の場合でも同じだが、変換効率100%なら物質がなくなるので温度もない。温度は粒子の速度で決まる。粒子がないので圧力もない。温度がなければ光も出ない。何もかもなくなるのでは」
「それではエネルギーは全て光以外の電磁波に変換するということか?光も出ないのに光以外の電磁波が出るのは合点がいかない」
「もしかしたら物質が100%エネルギーに変換したら物質は無くなるので何も起こらないのではないか。逆に考えると何も無いところから突然宇宙が誕生したのかもしれない」

共生人の不満

 第3地球の共生人は、潜在能力は自分たちの方がはるかに高いのに、非共生人に政府や重要機関を牛耳られている事に不満を持つようになってきた。この不満を察知した微小生物も、共生ではなく人間との一体化を意識するようになった。一体化すれば人間側から見ればはるかに高い知能と満足度を得られ、微小生物から見ても、自由に人体が使えるようになる。
0.1%の会話時間を利用して微小生物の間での合意が成立し、共生されている人と微小生物との間の合意も成立した。
非共生人が知らないうちに、共生人75億人は微小生物と一体化し、超能力をもつスーパー人類へと変身した。
すると、社会生活においてもたちまちスーパー人類が力を持つことになった。それは政治においても例外ではなく、まもなく田上政権が復活することになった。75億人のスーパー人類と5億人の非共生人との間の力関係は歴然である。今まで支配されていた不満もあり5億人の普通人は惨めな状態におとしめられた。
 普通人はひそかに直並列通信を使って第4太陽系の同胞に救いを求めた。
 この頃には第3太陽系の第3地球と第4太陽系の第4月との間の通信方法も整備され、第3太陽系と第4太陽系の間の10箇所に直並列通信用の基地局が設置されていた。基地局は単に電波を増幅するのではなく、直並列通信のいわば翻訳機能が備われ、往復50年かかる会話を実質的に10年に短縮できるようになっていた。したがって最初に普通人からの通信を受け取ったのは25年前だったが、その先の状況もほぼ正確に把握できるようになっていた。
 この救援の通信を受け取った頃には第4太陽系の開拓も大幅に進み、活性化エンジンも完成し、第4地球の外側の引力の強い惑星との間の輸送用に多数の宇宙船が建造されていた。さらにまた、物質を100%エネルギーに変換し、結果的に物質が忽然と消失する技術、この逆の真空中に物質を生成させる技術、及び同一ポテンシャル上の物の移動には原則エネルギーを必要としない法則を利用した、単純な物質の瞬間移動技術も試験段階に到達していた。
 普通人が直並列通信を使用して第4太陽系に救援を求めた事は、通信記録からすぐにスーパー人類側に知られてしまった。これにより益々普通人は苦境に追いやられ、居住区域も職業も制限され、主に鉱山での採掘作業に従事させられた。まるで奴隷扱いだった。

第三地球に誕生したもう一つの政府

 普通人が救援を求めてから25年が経過した。
ある日突然空から小さな球体が第3地球の中心地に落下した。
この不思議な落下物はすぐに物質研究所に運ばれ、成分が分析された。何とその物質は活性爆弾に使用するAB2物質が安定化処理された物質だった。もし安定化処理されてなければこの第3地球は活性物質に変換され、巨大爆発するところだった。
 第3地球におけるスーパー田上政権は非常事態を宣言し、この事態について分析を行なった。桁違いの知能を有するスーパー人類にも全く理解できない現象だった。しかしどう見ても第4太陽系からの警告に違いない。しかし全くつじつまが合わない。
普通人の救援要請が第4太陽系に届いたのは要請してから25年後の筈である。直並列通信といえども25光年離れた第4太陽系に届くのには25年かかる。救援要請が届いてから5日後に警告用の不活性化させたAB2物質が届くはずがない。スーパー人類たちはパニックに襲われた。
 パニックの中で、各種分野の技術者が集められこの不思議な現象の議論を始めた。

「AB2物質は安定化処理されているが、相手が本気を出したらこの星は消滅させられる。AB2物質を作れるのはこの近くでは第4太陽系しかない」
「25光年離れているので少なくとも50年以上前に発射されたはずだが、50年前に完成していたのだろうか。とてもそうは思えない」
「普通人が出した救援要請が第4太陽系に到着してから5日後に警告が届いたのを偶然とするわけにはいかない。偶然でなければ光の速度をはるかに超越した速度で来た事になる。まさかあの技術、あの技術が完成したのか」
「あの技術とはどの技術だ」
「瞬間移動技術だ。同一ポテンシャル間の物の移動には本来エネルギーがかからない。あれを応用した技術だ」
「第2地球時代に月の中心を通る貫通トンネルを作り、エネルギー無しで月の裏側から表側にカーボンを運んだ事がある。同一ポテンシャル上ならエネルギー無しで移動できるのは確かだが光速をはるかに越えた瞬時移動は有り得るのか」
「我々の知能ではわからない」

 無論、普通人たちにもこの現象は全く理解できなかったが、第4太陽系の同胞からスーパー人類への警告のメッセージに違いないと信じ、弱気になったスーパー人類と強気で交渉する事を決めた。
普通人は、微小生物が75億人の人間と共生してから自分達の権利は大きく剥奪されていた。人体を複数使用する権利も人体を乗り換えて移動する権利も全て奪われていた。
 5億人の普通人による独立政府が作られ、阿部政権が復活した。
阿部政権は第4太陽系の活性爆弾の傘の下、田上政権に対し強い態度で交渉し、「第3地球を、赤道を境に2つに分割し統治すること」に合意し、相互不可侵条約を締結した。 
また第4太陽系との通信に使用する直並列通信機や最新型カーボン変成機などの重要な機材の多くを普通人側に引き渡す事にも合意した。
 第3地球の半分の面積を領土とした普通人は、第2地球での法律をそのまま引き継ぐ事を決め、インフラの整備や人体の製造を開始した。無論この事を第4太陽系に直並列通信で報告した。

 数十年が経過し、第3地球の普通人の人口も30億人までに達し、本人を除く人体も90億体までに達していた。
 待ちに待った第4太陽系からの宇宙船団が普通人側の領域に到着した。第2地球から2つの船団で旅立ってから、およそ1000年ぶりの再会である。宇宙船団から沢山の先端機材が運び込まれた。無論活性爆弾も運ばれ、大規模な軍事基地が建造された。微小生物感染対策用に完璧にコーティング処理するためのコーティング剤も運ばれてきた。普通人側の人体の脳は全てコーティング処理が施された。また宇宙には多種類の監視衛星が打ち上げられ、スーパー人に対する監視体制が構築された。
 一方75億人のスーパー人は、いくら知能が高いとは言え圧倒的軍事力を備えた普通人側には逆らえず、満足度を上げたまま坦々と暮らすしかなかった。微小生物から見ても自由に使える大きな体は持ったものの、実質、微小生物と同じだった。それでも彼らは満足していた。ただ相互不可侵条約がこのまま履行されるか否かの危惧があった。

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