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SFF人類の継続的繁栄 第1章『天体宇宙船団の出航』

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

新たな旅立ち

天体宇宙船構想から300年が経過し第5暦1500年となった。移住民により各天体のインフラの構築と、天体宇宙船へ向けてのエンジン設置作業が終了した。
第3太陽系から自治政府の阿部大統領をはじめとして多くの人が100年かけて駆けつけた。第3太陽系の技術者1万人もこの大構想に参加する事になり、各艦に乗り込んだ。 
 各艦の試運転が行われ、予定通りの性能が確認されると、隊列を組むために各艦が集合空間を目指して航行を開始した。
 100年をかけ、傘艦を先頭にした隊列ができ上がり、天体宇宙船団が出航した。しかし巨大な質量を持つ天体宇宙船の動き出しの速度は驚くほど低速である。1時後にやっと1m、1日後にやっと200m移動した。
 各艦の距離の微調整を行うため微妙なエンジン出力調整操作が開始された。
 エンジン制御システムの微調整や間隔制御システムの最適化を行うため、月の移動基地と各天体の移動基地との間で、技術者が体を乗り換えて盛んに往来した。
この惑星宇宙船団を率いる江田大統領や政権幹部にアドバイスや意見交換を行うために、上田大統領や阿部大統領も度々訪れた。両大統領のアドバイスもあり、人類発祥の地球の制度に合わせて1日を24時間、1年を365日とする年月日制度を定めた。
60億人あまりの移住者への別れを惜しむ沢山の友人たちも訪れた。

 出航して5年が経過した。
宇宙船団はまだ第4太陽系の中を航行していたが、微小天体が沢山浮遊する領域に突入し、隕石が沢山各艦に落下してきた。まだ航行速度は遅かったため、各艦の引力による落下である。その領域を抜けるまでの2年間、各艦の住民の多くは地下のシェルターに避難していた。
 出航後30年が経過した頃、第4月からの距離はようやく100億キロに達し、ついに第4太陽系から脱した。微小天体はほとんど無かったが、航行速度が速くなったので微小天体が当たるとすれば旗艦の前方への衝突である。このため初めて傘艦の傘が開かれ、最大開度の20度に設定された。それにあわせて傘艦と旗艦との距離も修正された。
 月からの距離は100億キロになったが、通信には片道10時間もかからないので、月と船団との人の往来は可能だが、安全性の面で今後の往来は行わないように取り決めた。
それから70年。出航してから100年が経過すると、出力全開で航行を続けていた船団の速度は大幅に増し、第4太陽との距離は10光年に達していた。傘艦の傘の開度も10度まで下げられた。わずかな頻度だが微小天体が傘に当たり、斜め後方に吹き飛んだ。
 第4太陽系との連絡には往復20年かかるので、今後は連絡無しで、同胞の力を借りずに自力で全て解決しなければならない。
 まず、直線航法について解決しなくてはならない。宇宙の正確な構造がわからないので、直線に航行しても元に戻ってしまう事も考えられるが、それはそれとして可能な限り直線上を航行し、銀河の先を目指す事になっていた。
この問題に対し関連技術者が5番艦に体を乗り換えて集結し議論を行った。

「直線的に航行するといっても、現に新たな太陽系が迫っている。太陽系の中を航行するのはリスクが大きく、迂回しなければならない。迂回すれば元の直線に戻るのに誤差が生じるだろう」
「現在のシステムでは迂回のような短期的な事に対しては完全計算が可能であり、完全に直線上に戻す事ができる。問題なのは長期的な問題だ。現在のシステムでは他の天体を観測して方向を決めている。無論観測対象の天体も動いている。その動きを正確に掴んでいるはずだが、我々のようにとんでもない動きをする物があるかも知れない。もっと根本的な方法はないだろうか」
「これからどんどん光速に近づいてゆく。すると進行方向に放った光はゆっくりと離れるように見えるのだろうか。それならその光を追っていけば良いのでは」
「光速に近い速度で動いていても、そこから放たれた光は光速で離れるらしい。しかしこれは大昔の理論だから実際にはどうなのかわからないが。しかし光を進行方向に発射する案は面白い。その光が何かに反射すればその方向を目指して航行すれば良い」
「しかし光は重力の影響を受ける。進行方向にブラックホールがあれば光をまっすぐに飛ばす事はできない」
「光が曲がる問題よりも、ブラックホールに衝突するほうがはるかに大きな問題だ」

 この様な議論を経てブラックホール対策の議論が開始された。

ブラックホール対策

「航行直線上の近くのブラックホールを見つけるのが先決だ」
「照射した光がブラックホールに向かえば光は吸い込まれ反射光は戻ってこない。戻ってこなければ何もわからない」
「発光体を進行方向に高速で発射し、その光の反射を観察すれば前の状況がわかるはずだ」
「もしブラックホールがあった場合はどうする。活性爆弾で吹き飛ばすのか」
「理論的にはブラックホールでも活性爆弾で吹き飛ばすのは可能だろう。しかし大きなブラックホールを吹き飛ばしたら何が起こるかわからない。宇宙が消滅するかも知れない。迂回するしかない」
「とにかく早期に障害物を見つける事が必要だ」
「大きな障害物なら早期に見つかるが小さな物は接近するまでわからない。極小さな小天体なら傘艦で対処が可能だが中途半端な大きさの障害物が最も問題だ」

 この様な議論を経て中途半端な大きさの障害物対策の議論が開始された。 

「中途半端な障害物は見つけたらすぐに爆破しなければならない。活性物質に変換するのを待つ余裕がない。中途半端な爆破に必要な活性物質の量は僅かである。AB2物質を搭載したロケットが障害物に達したらすぐに爆発するように配合量を変更しよう」
「そうすることが絶対必要だ。しかしこれから益々増速する。傘艦よりずっと前方に破壊艦を飛ばすべきだ。障害物を見つけたら自動的に破壊するようにすれば良い」
「それでは同じ事だ。旗艦は無事でも破壊艦が障害物にぶつかってしまう。破壊艦など大げさなものは使わずに、破壊用の小型ミサイルを飛ばしておけば良いのでは。ミサイルなら安く作れるので使い捨てでも問題ない」
「ミサイルごとに前方監視装置と4基の活性化エンジンをつけるのか」
「前方監視装置というのはネーミングがよくない。要するに情報を扱うものだからいくらでも小さく安価に作る事ができる。監視チップと名前を変えたほうが良い」
「活性化エンジンはどうするのだ。エンジンは情報ではない」
「通常の活性化エンジンでなく、短時間で活性物質を消費する大出力型の超小型ロケットエンジンを使い、秒速1000キロぐらいで傘艦から発射して100万キロぐらい離れたら逆噴射により減速させ、距離を保ったままにすれば良い。極安価に作る事ができる。宇宙船団がもっと増速したら1億キロ先にも10億キロ先にも配置すれば良い」
「10億キロも離れたらその間に急に現れた障害物に対処する事ができない」
「それならば、例えば1千万キロ間隔にミサイルを100個ぐらい配備したら良いのでは」

ミサイル防衛システム

 この様な議論の下、ミサイル防衛システムを配備する事になり、ミサイルが大量に生産された。ミサイルには前方と後方をまっすぐに照射する超レーザーと通信装置も装備された。
量産されたミサイルによる防衛システムは次のように決定された。

  1. 傘艦に配備した活性爆弾発射砲を取り外し、ミサイル発射装置を取り付ける。
  2. ミサイルを発射し、傘艦の前方照射ビームで誘導し、秒速500キロまで加速する。
  3. 傘艦の前方照射ビームと発射されたミサイルの後方照射ビームに誘導された2番目のミサイルを、5時間後に発射する。
  4. 同様にその5時時間後に3番目のミサイルを発射する。
  5. 5時間毎に次々とミサイルを発射し、延々と繰り返す。
  6. 前方のミサイルから後方のミサイルに次々と通信し、通信のタイムディレーを最新技術で補正し、旗艦で全てのミサイルの状態を把握する。
  7. ミサイルが障害物を見つけたら、連携したミサイルのコンピュータにより、どのミサイルで爆破するかを計算し障害物を爆破する。

 以上のように決定され、超小型ミサイルは5時間毎に延々と発射された。
ミサイル防衛システムの完成により、船団を障害物から守る方法は、障害物の違いによりつぎのように決まった。

  1. ブラックホールのような早期に発見可能な巨大な障害物は迂回する。 
  2. 早期に発見が困難な中途半端な大きさの障害物は、ミサイル防衛システムにより活性爆弾を搭載したミサイルで破壊する。
  3. 小さな微小天体は傘艦で対処する。

このミサイル防衛システムの特徴は、高速で飛翔する障害物を爆破するのではなく、ほとんど止まっている障害物をミサイルが高速で飛翔し爆破する事にある。
また、別の目的として、はるか前方を飛翔しているロケットの位置を検出する事により、直線航行問題に利用することにあった。
結果として、このシステムの導入は成功だった。これより、およそ1000年にわたって、この人類60億を乗せた船団の航海は順調なものとなった。

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