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SFJ人類の継続的繁栄 第10章『四足人の行く末』

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

意外なひらめき

 四足人の移民船における、悲惨な現状を知った人類は、彼らの窮地を救うべく一刻も早い救助対策が求められていた。

「このままでは全員死んでしまう。彼らのエネルギーの源である太陽光を早急に浴びさせなければならない」
「この位置で太陽光を直接浴びると太陽光が強すぎてショック死してしまう。1桁以上強すぎる」
「それなら太陽光を95%ぐらいカットする薄くて丈夫な袋を作り、袋の中に四足人を入れ、袋と宇宙船とをロープでつなぐのはどうだろうか」
「シリコン変成機をフル回転しても1億枚の袋を作るのには3日はかかる」
「全員を宇宙船から脱出させる必要はない。すし詰め状態が解消できれば宇宙船の中に光が入る。しかし6千万人ぐらい脱出させることが必要だろう」
「10人用の大きな袋を作れば6百万枚で済む。10人用でも1枚あたりの製造時間は倍程度だろう」
「宇宙船は200隻と聞いている。1隻あたり3万本のロープが必要だ。ロープを作るのは簡単だが3万本もロープを結ぶ場所がない」
「現在のシリコン変成機はカーボン変成機並みに進化している。細くて強いロープが作れる。長いロープを作って10人用の袋を数珠繋ぎのようにくくりつければ良いだろう。ロープの長さを10kmにして5メートル間隔にすれば2000袋をくくりつける事ができる。一隻に15本のロープで済む」
「それでゆこう。早速製造を開始してくれ。上層部へは後で説明すればよい」

 早速、袋とロープのフル生産が始まったが、一刻も無駄にできない現状において、あたまを抱える問題はまだ残されている。

「明日の今頃には全ての生産が終わっている。問題は運搬手段だ。宇宙船では時間がかかりすぎる。ロケットで運ぶには量が多すぎる」

 運搬方法に名案がなく、議論は行き詰ってしまった。元捕虜の1人ががっかりと顔を上に向けうなだれた。彼らのうなだれ方は人間とは逆に顔を上に向けるのである。
うなだれた視線の先に天井のライトが目に留まった。ライトを指差し「あれは何だと」叫んだ。
太陽光をエネルギー源とする彼らは、意外にもライトという物を全く知らなかった。

「あれが宇宙船にあれば助かる。私も今、あの物の光を皮膚に受けて発電している。ロケットであれを届けられないか」 

難民救助作戦

 意外な一言にメンバーは驚き、多くのメンバーがあわただしく会議室を出て行った。残ったメンバーが彼ら20人に説明し指示した。

「ライトならいくらでもある。ライトの電源として使う小型の電池もいくらでもある。早速ロケットで打ち上げる準備のために皆、部屋を出て行った。至急、宇宙船に連絡しなさい。とりあえず大量のライトと電池を打ち上げると連絡しなさい。ライトは太陽光の代わりとなることを連絡しなさい。使い方は後で教えるので、よく理解してから宇宙船に説明しなさい」

 無論ライトは一時しのぎであり、ロケットによるライトの運搬と平行して、高速宇宙船により大量の袋とロープが運搬された。
 5cm間隔に小さなライトが大量に取り付けられた長いワイヤが200本、極小さな質量電池200個がロケットにより宇宙船に届けられた。すし詰め状態の宇宙船の中に大量の小さなライトが点灯した。これで数日は持ちこたえられるだろう。
 3日後に高速宇宙船が10隻到着した。2隻には資材が積み込まれ、他の8隻には9千人の宇宙隊員が乗船していた。9千人の宇宙隊員は宇宙空間を遊泳しながら6千万人を袋に詰めてロープでつながれる。残りの4千万人は宇宙船に残したが、すし詰め状態が解消され、太陽光が差し込み回復に向かった。
 その10日後にやっとこの星の裏側の上空に200隻の輸送用宇宙船が到着した。表半球側から200隻の小型宇宙船が救助のために裏半球側に向けて離陸。小型宇宙船により輸送用宇宙船に括り付けられたロープが切り離され、2万人を収納した2000個の袋をゆっくりと地面に下した。
着陸地点には沢山の作業員が待ち構え、袋が地面に着くたびにロープから袋を切り離し、袋から出てきた四足人に、用意していた太陽光緩和服とサングラスを与えられる。ロープが切り離された4千万人を乗せた200隻の宇宙船もゆっくりと着陸した。着陸した宇宙船にも太陽光緩和服とサングラスが届けられることとなった。
通信作業員が、四足人が降りた付近のあちこちに簡易アンテナを設置されると、捕虜だった20人を乗せた宇宙船が裏半球側の上空に到着し、簡易アンテナを介し人類からのメッセージと当面の暮らし方についての注意点を説明した。説明を聞いた四足人は、〔自分達を全力で救ってくれた人類に対し抱いた強い信頼感〕を益々強め、地面に横たわったまま久しぶりに深い眠りについた。

移民政策成功のカギ

  緊急移民対策省が新設され、移民プロジェクトは移民戦略室と名称を変え、省の中核の戦略部門となった。そのほかにも四足人を隕石から守る住宅部門やインフラ部門が省の中に新設され、戦争に備える体制から一転して戦った相手を支援する体制へと転換した。
 もと捕虜だった20人の交渉役の内、リーダー、サブリーダーの2人を除く全員が、住民のケアや組織作りのため裏半球側に移動した。
 移民戦略室のメンバーとして2人の四足人が加わり、今後の支援について会議を行った。会議の冒頭、四足人のメンバーが、「戦いの相手だったにも関わらず我々四足人を救助し寛大に迎えてくれた事に対し、全四足人を代表して最大の感謝を表する」と人間の仕草も加え挨拶した。
挨拶後すぐに本題に入り活発な議論が行われた。

「犠牲者を出さずに全員を裏半球側へ移民させる事に成功した。戦争よりずっと多くの人の力を合わせ成功した。しかし移送に成功しただけだ。これからが本当の移民プロジェクトだ」
「最初に行わなくてはならないのは何と言っても隕石への対策だ。裏半球側への隕石防御システムは全く構築していない。今からシステムを構築するのではおそすぎる。隕石落下を前提として対策を行わなければならない」
「今でも隕石から作業員を守るためのシェルターを採掘現場に備えてあるが、収容人数は全部で10万人が限界だ。これからシェルターを新設するにしても1億人は論外だ。たとえ1億人を収容できるシェルターを作ったとしてもシェルターに閉じこもっていては何もできない。別の方法を考えねばならない」
「一時的に、隕石の心配のない表半球側に移住させてはどうだろうか。無論、我々の何割かが四足人にとって毒物なので人の住んでないところへの移住だ」
「我々四足人は人間との接触を非常に恐れている。救助される時でさえ多くの仲間が接触する事を拒んでいた。我々捕虜となった20人は長期間人間と接触しているので恐怖感はないが、他の者は恐怖感がなかなか消えない。隕石に当たって死んでも運が悪いだけなので、表半球側へ移住させる事は難しい」
「あまり調査されてないが、裏半球側は洞窟だらけ、という報告がある。本当に洞窟だらけなら洞窟を当面の生活や活動の拠点にできる。無論太陽光の問題はあるが」
「太陽光ならあまり問題はない。奥深い洞窟でなければ鏡で反射させて内部に太陽光を取り込むことができる。ここの石英を使った鏡なら何回反射させても光の減衰はほとんどない。太陽光の利用が無理な奥深い洞窟でもライトを使えば問題ない。電源ならいくらでもある」
「我々四足人は活性技術だけは人類よりずっと優れている。我々は質量電池を作った事はないが、我々の活性物質についての技術は質量電池には大いに役立つだろう」
「何れにせよエネルギーについては問題ない。本当に洞窟が沢山あれば当面の隕石の問題は解決できる」
 
洞窟がカギという事がわかり、洞窟についての調査を行う事にした。四足人のリーダーが裏半球側の18人の仲間に洞窟の調査について連絡を取った。既に多くの住民が洞窟を見つけ、洞窟の入り口付近の太陽光が僅かにあたる場所に避難したとのことである。
洞窟に使用するライトの大量生産が始まった。質量電池はあちこちの工場内に沢山備蓄されていた。宇宙船により、ライトを沢山取り付けたワイヤと質量電池が各洞窟に運び込まれると、なんとか1億人全員が洞窟で暮らせるようになった。

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