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SFK人類の継続的繁栄 第8章『新たな懸念』

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

第4太陽系の疑念

 承認権を得たことにより事実上第4太陽系は第5太陽系を支配できるようになった。第4太陽系に不都合な事は全て承認を拒否できるようになった。しかしながら第5太陽系がこの状態で満足するはずがない。そのため第4太陽系は常に第5太陽系の動きを監視していた。
 そんな第5太陽系政府から、宇宙観光開発のため遠距離宇宙船を第6太陽系の方角に向けて出航させたい、との承認依頼が提出された。第4太陽系側も、第5太陽系が宇宙観光や第6太陽系に興味を向けるのは、承認権の問題で不満の溜まった第5太陽系の〔ガス抜き〕の観点からも悪くない事だと考え、承認した。無論、遠距離宇宙船団の動きは監視していた。

――40年の航行のあと、第6太陽系の中の小さな天体に到着したようである。

――数年後1隻の宇宙船が第5太陽系への帰途についたようである。

――別の宇宙船団が第6太陽系に向かって出航した。第6太陽系を観光地化する計画に拍車がかかったようである。

――その数十年後別の宇宙船が第5地球に着くなり爆発事故を起こした。

――それから間をおかず、第5太陽系への帰途のため第6太陽系と第5太陽地点の間の領域を航行中の宇宙船が超巨大爆発を起こした。爆発の規模は第5地球を吹き飛ばすほどの規模である。
 
今まで観光開発だと考え、第6太陽系への宇宙船の往来を漫然と監視していたが、この超巨大爆発によりただ事ではないことを知り、第4太陽系政府は直ちに〔真相究明プロジェクト〕を発足させ、これまでの動きを解析し真相について議論した。

「爆発の規模は活性爆弾数トン級だ。もし第5地球に到着後爆発を起こしていたら、第5地球は粉々に破壊しただろう」
「観光開発など真っ赤な嘘だ。第6太陽系から活性物質を運んでいたのに違いない。しかし活性物質なら第6太陽系からわざわざ運ばなくても、どこでも作ることができる。ただし活性物質は不安定で製造には大きなリスクが伴うが」
「理論的には、物質を連鎖的に活性物質に変換する事のない活性物質の存在が予測されている。物質自体も簡単に爆発する事のない安定したものだと聞いている」
「結局失敗に終わったようだが、第5太陽系は軍事大国を目指していたのではないだろうか。活性物質と等価なエネルギーを持ついわば理想爆薬が第6太陽系にあるのを見つけ、それを掘り出そうと考えていたのではないだろうか」
「第6太陽系から最初の宇宙船が戻ってきたとき、うちの監視員が宇宙船との交信を傍受していた。その中に3トンと言う言葉があったそうだ。荷下ろしの様子もつかんでいる。大量の物質を詰めた大型容器が下ろされたようだ。もしも、それが理想爆薬だったとすればその推論は間違っていない可能性が高いだろう」

 この一言で、会議のメンバー一同、今や自身の肉体には流れていないが太古の記憶に刻まれた感覚を思い出した。まさに「血の気が引く」というやつである。

第6太陽系政府の存在

「もし安定な理想爆薬なら大変だ。それだけの量でも十分に宇宙を支配する事ができる」
「しかしその後運搬中の宇宙船が超巨大爆発を起こしたのは、第6太陽系で採取した爆薬は理想爆薬ではなく、通常物質を活性化する物ではないが不安定な爆薬だ。不安定な爆薬では十分な武装ができない」
「とにかく第6太陽系に鍵がありそうだ。第6太陽系の詳細な調査を行おう」
「我々の第4太陽系と第6太陽系とは25光年も離れている。望遠鏡で観測すれば25年前の様子がわかる。瞬時波レーダーを使えば今の様子もある程度わかる。第5太陽系の監視と同時に第6太陽系の状況を調べよう」

 各種の調査により第6太陽系の驚くべき状況がわかってきた。

 

  1. 第6太陽系の大きな惑星の衛星には地球の人類を起源とする人類が住み繁栄している。
  2. その衛星から見えないところに、第5太陽系が使用したと思われる大きな基地の跡があった。
  3. 大きな基地は第6太陽系の中の天体から問題の爆薬を掘り出すために建造したもの。
  4. 第6太陽系に住む人類が大きな基地の存在や第5太陽系の存在を知っていたか否かは不明。
  5. 第6太陽系に活性化させない理想の爆薬が大量にあるようだが、何処にどれ程あるかは不明。
  6. 第6太陽系の住民は瞬時通信を使用しているようである。

「第6太陽系に人類がいることがわかった。その人類は繁栄しているようだが、文明の程度ははっきりしない。自分達のいる太陽系から爆薬を掘り出されても気が付かなかったようなので、あまり技術は発展していないだろうが、あの太陽系には活性物質よりは安全な、特殊な爆薬が大量にある事だけは確かなようだ。第5太陽系は巨大爆発に懲りてあの爆薬には二度と手を出さないだろうが、すでに活性物質よりは扱いやすい爆薬を3トン手にしているようだ。別に6トンあるという話もある。場合によっては第6太陽系を我々の支配下に置くことが必要だ」
「瞬時通信は使用しているようだ。先ずは連絡を取ってみよう」

ファーストコンタクト

 ある日、突然、第6太陽系の瞬時通信機に第4太陽系と名乗る者から連絡が入った。第6太陽系に同胞が住んでいることがわかったので連絡したとのことである。
 その数日後、第4太陽系から挨拶のための使節団を送りたい、乗り込むための人体の仕様を送るので製造して欲しい、との連絡が入った。
 早速バーチャル政府に連絡した。
対策会議のため政府要人や関連技術者がリアル世界に派遣され、バーチャル政府とリアル政府の実務者による対策会議が開かれた。

リ:「先日、『バーチャル世界に引き込めばどのようにでもなる』という説明を受けたばかりだ。早速お客さんが現れた。第4太陽系から、『挨拶のためにこちらに使節団を送りたい』との連絡が来て、乗り込むために必要な人体の仕様まで連絡してきた。多分、宇宙船の超巨大爆発がきっかけになり、第5太陽系の思惑とこちらの存在を調べたのだろう。元々、第5太陽系は第4太陽系に対抗する意味で軍事力の強化を図ろうとしていたようだ」
リ:「多分理想爆薬への関心と、第5太陽系の動きを封じるために我々に接近したいのだろう。接近どころではなく、我々の第6太陽系を支配するつもりで調査に来るのかもしれない」
バ:「人体など作る必要はない。とにかく瞬時通信の接続先をバーチャル側にしておけば良い。我々のバーチャル社会に引き込めばどのようにでもなる。そのためのシナリオをどう作るかだけの問題だ」
リ:「第4太陽系の近くには第3太陽系があり、そこにも人類が住んでいるようだ。第3、第4、第5太陽系との今後の付き合い方をどのようにするかが問題だ。3つの太陽系のもめごとに巻き込まれたら面倒だ。特に我々第6太陽系には理想爆薬がある。今回の超巨大爆発だけであきらめるとは思えない」
リ:「第6太陽系が他の人類が住む太陽系とのもめごとに巻き込まれないように、他の太陽系から干渉を排除する事を最大の目的としたシナリオを作ろう」
バ:「第4太陽系から来る使節団に、第6太陽系が超巨大国家であり、とてもかなわない相手である事を強く印象付けよう」
リ:「それだけでは物足りない。かえって我々の力を借りようとする者が出ないとも限らない」
バ:「それでは我々に接近する事が如何に危険な事かを植え付ければ良い。大統領は残忍なうえ独裁政権で、弱い相手は植民地にして利益を搾り取る、という風に強調すれば、うわさが他の太陽系にもすぐに広がるだろう」
リ:「そのシナリオで行こう」

 詳細なシナリオが作成され、三政府により承認された。

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