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SFK人類の継続的繁栄 第16章『人はいつだって欺く』

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

インターネット探査プロジェクト

 バーチャル政府とリアル政府により第4太陽系のインターネットを探索する作戦が承認された後、通信関連の技術者団がリアル世界を訪れ、第4太陽系のインターネットに入り込むための、リアル世界の技術者団との合同技術会議が開催された。    

リ-高官:「他の太陽系から脅威を排除するため、天体ごとこの銀河系から脱する事も検討されたが、色々と無理があり、逆に第4太陽系の動きを監視するために、バーチャル世界の有志にインターネットの中を探索してもらう事になった。どのようにしたらインターネットに入れるか検討するために、わざわざこちらに来ていただいた」
リ-1:「第4太陽系のインターネットに入り込むにも、第4太陽系との瞬時通信は中断している。お互いに子供じみただましあいを行っていた。瞬時通信は再開できるだろうか」 
リ-高官:「それは政治家に任せば良い。だましあいも政治の一部だ。我々は技術面だけ考えればよい」 
バ-1:「我々の得意分野なので、あまり難しく考えてなかった。インターネットに入り込んでしまえばその後は簡単だが、瞬時通信を使って入り込む方法は我々には良くわからない。第6太陽系と第4太陽系とはだましあいを行っていた。相手も用心しているだろう。瞬時通信のデータに紛れ込むのはかなり危険だ。当然不審な信号を排除するための高度なフィルターもあるだろう」
バ-2:「しかし、瞬時通信を使わなくては向こうに行くだけで何百年もかかる。たとえ、ロケットに小型クラウド装置を搭載し第4太陽系に行ったとしても、ネットに接続できる保証はない」
リ-2:「第4太陽系と第5太陽系とは色々あったが、第3太陽系とは今のところ何もない。3つの太陽系のインターネットは瞬時通信でつながっているようだ。先ずは第3太陽系のインターネットに入り込めば良いのでは」
リ-高官:「第3太陽系との交流のきっかけは政治家に任せればよい。そのあとの具体的な方法はどのようにするのかだ」
リ-2:「瞬時通信技術は未熟だと言い、度々通信を切断させ、切断のたびに少しずつデータを紛れこませるというのはどうだろうか。こちらの技術が低いと勘違いすれば、相手はあまり用心しないだろう」
バ-3:「こま切れのデータでは駄目だ。ある程度まとまっていなければ無理だ」
リ-2:「我々の通信技術が未熟だとわかれば相手は協力してくれるだろう。途中から通信技術の低さに嘆き、『通信技術の向上に手を貸して欲しい』と言えば協力してくれるだろう。しばらくしてから、『通信の問題点を見つけた。これから我々の作った最新型の宇宙船の画像データを送信するので、そちらで記録して確認して欲しい』と頼めば記録してくれるのでは」 
バ-2:「大き目の記憶装置を使ってくれたほうが都合が良い。自慢げにすごい宇宙船なのでデータ量が多い、と言えば良いのでは? 送るデータは旧式の宇宙船をいかにも建造したばかりの最新型のように見せかければ良い。大きな記憶装置にもぐりこめる上に、相手は送られた宇宙船のデータを見て笑いだすだろう。我々の技術が低いと思えば送られたデータに対して用心しないだろう。その間に我々の前進基地になるメモリーエリアを確保する事ができる」
リ-高官:「まただましあいだが良いアイデアだ。それで行こう。その先はどうするのだ?」 
バ-2:「一旦データに入り込めれば後は思いのままだ。われわれの腕の見せ所だ」
バ-3:「記憶装置にもぐりこんだだけでは意味がない。その記憶装置がインターネットに接続されなければその先は何もできない。インターネットに接続される事が絶対に必要だ」
リ-2:「記録された後、さらに自慢げに宇宙船のことを話し、われわれの技術を見せたいのでネットにアップしてくれないかと頼めば、コメント付でアップされるだろう。そうすれば第3太陽系の笑いものになり益々ガードが甘くなるだろう」 
リ-高官:「あまり馬鹿を演じすぎてはまずい。第4、第5太陽系にも噂が伝わり、こちらの目的がばれてしまう。何事も程々が良い。技術検討というよりインターネットに入り込むための戦略になってしまった。この戦略をまとめて報告書を作成しよう」

 報告書が作成され、両政府により戦略は承認され、両政府による〔インターネット探査プロジェクト〕が発足した。

準備万端

 バーチャル側では宇宙船や諸々の必要なデータが作成された。探査隊員2名が選抜され、隊員のデータもコピーされた。
 リアル側では第3太陽系との瞬時通信を行うための綿密なシナリオを検討した。

「建造したばかりの最新型宇宙船のデータを送るというのは不自然だ。宇宙船は大きくデータ量も多いのでこれをだしに使うのは良いだろうが、自慢げに送るのではなく別の理由が必要だ」
「我々は瞬時通信技術が未熟で、瞬時通信技術の向上に手を貸して欲しい、というシナリオになっている。宇宙船のデータではなく瞬時技術関係のデータを送るのが自然だろう」
「瞬時技術関係のデータとして送れば相手は親身になってデータを読み取る事になるだろう。それでは他のデータが紛れ込んでいる事に気付いてしまう。『瞬時通信の問題が解決した』と言って、確認のために旧式の宇宙船のデータに特殊な鍵をかけて送り、記憶装置に保存してから鍵を開けて欲しい、宇宙船の内部も含め外観に切れ目がないか確認して欲しい、といえば良いのではないか。鍵については詳しく調べるだろうが宇宙船については依頼どおりに外観を丁寧にチェックするだけで済むだろう」
「最初に送信する宇宙船のデータには何も紛れ込ませずに、つなぎ目の数箇所に亀裂が入ったデータを送るのはどうだろうか。亀裂がないか確認して欲しいと連絡すれば、亀裂を見つけ、亀裂箇所を連絡してくれるだろう。次に瞬時通信ソフトを直したので確認して欲しいと連絡し、亀裂のない宇宙船のデータの中に、入り込む者のデータを紛れ込ませて送信すれば良いのでは。そうすれば亀裂のないことを確認し成功したことを連絡してくるだろう。問題はデータを紛れ込ませた宇宙船をどのようにインターネットにアップしてもらうかだ」
「そこまで行けば成功だ。当然、通信担当者は第6太陽系と通信を行っていることを、インターネットを使って上司や政府のしかるべき機関に報告するだろう。そのときに宇宙船も添付されるだろう。その後はすばやく宇宙船から脱出し他の記憶装置に乗り換えれば良い」
「添付したファイルを開く時にウイルスチェックに引っかからないだろうか」
「ウイルスチェックをすり抜けるのはバーチャル世界の技術でいかようにもなるだろう。このシナリオを基にバーチャル側とすりあわせを行おう」
 
修正されたシナリオにあわせて宇宙船のデータに修正が加えられた。リアル側、バーチャル側共に準備が完了した。

――また、人が人をだます準備である。

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