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SFL人類の継続的繁栄 第5章『リアル・バーチャル戦争の勃発』

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

記憶装置の異常

宇宙政府がインターネット上に発足し、その人口が200億人に達した頃、第4太陽系のインターネット運営会社の担当管理者が、自分の担当している記憶装置のデータ処理に時々遅延が発生する事に気が付いた。
通信の大半は瞬時技術を使用しており、データ処理に遅延が発生する事は考えられない。管理者が注意深く通信の状態を調査すると、時々奇妙な信号が記憶装置に出入りしていることがわかった。運営会社が問題の記憶装置の周辺を詳しく調べると、周りにある記憶装置にも奇妙な信号が出入りしていた。運営会社はインターネットの所轄官庁にこの問題について届け出ることにした。
 インターネットの調査機関により詳しく調査が行われ、この現象は第4太陽系の各所に発生していることが判明した。これを受けて、調査機関がまとめた報告書が所轄官庁を通し、政府に報告がなされる。政府の幹部は、これを第5太陽系による何らかの工作だと考え、更に調査するように命じた。
 調査範囲を広げると、第3太陽系とつながる領域にも発生していることが判明した。第5太陽系につながる領域も調査すると、この領域にも発生していた。発生場所や広がり方などを分析すると、第5太陽系による工作ではなく、問題は第3太陽系から第5太陽系まで広がっていた。
 政府は第3太陽系、第5太陽系の両政府にこの現象を連絡し、第3太陽系のインターネットは第4太陽系の調査機関が調査し、第5太陽系では独自に調査する事になった。
 調査の結果、この問題は3つの太陽系全体に広がっていることが確認できた。
 3つの太陽系のインターネットの隅々まで奇妙な信号が走っている事はわかったが、信号の内容までは知ることができなかった。奇妙な信号は通常の信号と同ように記憶装置間を出入りしているので、記憶装置内部の調査も行ったが、何ら異常は見つからなかった。ただわずかにメモリー容量が小さくなっているように思えた。
 この問題の原因究明は第4太陽系で行う事になった。記憶装置の外部からの調査では原因がつかめなかったので、インターネットから記憶装置を切り離して調査する事にした。記憶装置のデータが別の記憶装置に転送され、問題の記憶装置は切り離された。

ウイルスの正体

 記憶装置の電源が切断された。しかしこのクラウド装置のバーチャル世界の住民は何も気が付かなかった。電源が切断された事によりクロックが止まり、時間が止まり、気付けるはずもなかった。
 記憶装置が作業台に置かれ電源が接続された。詳しく調査したが異常は見つからなかった。しかし明らかにメモリー容量が少なくなっていた。容量を詳しく調査すると15%程少なくなっていた。容量が15%少ないのは明らかに異常である。 原因を詳しく調査すると、専門技術者にもわからない巧妙な手法で15%分のメモリー領域が分離されていた。この分離を解除しないと15%の中身を調べる事はできない。色々と試みやっと技術者はこの巧妙な分離を解除する事に成功した。
 このクラウド装置を中のバーチャル世界では日常が坦々と継続していた。
そんなとき、突然空間が広がり、遠くから色々なデータが押し寄せてきて世界が突然崩壊してしまった。

 技術者が15%の壁を取り除き中のデータを調査した。そこには解読不能なデータが詰まっていた。とりあえず別の記録装置にデータを移したが、記録様式が異なり完全に移す事はできなかった。それでも階層型コンピュータを駆使してある程度のデータの復元に成功した。階層型コンピュータから次々と復元されたデータの分析結果が出力された。
 関連技術者が階層型コンピュータを取り囲むように集まり、会議を開いた。政府の要人も駆けつけ会議に参加した。

「この問題は、大昔の地球で、家の中に虫が入り天井裏に大きな巣を作ったような問題か」
「そのようにも言えるが、中に入ったものはリアルなものでなくデータだ。ただ、データでも生物の可能性が高い」
「これは、いわゆるコンピュータウイルスみたいなものだろう。ウイルスは生物といえるのか?」
「その認識は違うかもしれない。現在、完全ではないが階層型コンピュータにより色々なデータが復元された。建物のようなものが多いが装置のようなものもあった。生物についての復元は複雑なので良くわからないが、人間の可能性もある。何れにせよ高度な知能を持った生物だと考えるのが自然だ」
「インターネット全体に広がっている問題も同じ生物が関連しているのか。もしそうなら事態は深刻だ」
「状況から見て同じ生物が関連しているようだ。何れにせよ本格的な調査が必要だ」

 他に10個、問題のある記憶装置を回収し調査した。3つの太陽系で起きている不可解な現象はこの生物によるものだと断定された。

報復

 リアル世界で調査が本格化すると、バーチャル世界は大混乱に陥った。そして、その対応にバーチャル世界の中央政府は追われることとなっていた。

「大事態だ。クラウド装置が1つ除去されたと思ったら、今度は10個除去され、80万人が死亡した」
「除去された10個の周りには多くの記憶装置がある。しかし除去されたのは我々のクラウド装置だけだ。我々の動きに気が付いて調査のために取り去ったのに違いない。我々がインターネットの隅々まで存在している事が知られてしまった。このままだと次々と我々の住むクラウド装置が除去され、我々は全滅する」
「我々はインターネットを掌握している。第4太陽系の政府にこれ以上除去しないように警告の連絡を行おう」
「連絡だけでは止まらないだろう。重要な施設を破壊してから連絡しよう」
「それだけでは甘い。我々の実力を見せ付ける必要がある。11箇所の施設を破壊してから交渉しよう」
「我々がいる中央政府のクラウド装置はすでに把握されているだろう。すぐに他のクラウド装置に移行してから破壊しよう。11箇所の施設の破壊の準備をしながら避難を進めよう」
「先ず1箇所の政府の施設を破壊し、そのあと立て続けに10箇所の施設を破壊しよう。その中には脳保管庫の近くの施設も含めよう」

 すぐに破壊するターゲットを選び、先ず1つの施設を破壊した。そして、新たなクラウド装置に移行完了後、続けざまに10箇所の施設も破壊された。

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