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SFL人類の継続的繁栄 第11章『三者の企み』

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

第4回三者会議

第3:「第4回三者会議を開催する。先ず、宇宙政府と第6太陽系に対し大変感謝する。両政府によるこの情報がなかったら我々第3太陽系が植民地にされるところだった」
宇宙:「第5太陽系の巨大爆発事件の件で一時期、一触即発の状態だった第4太陽系と第5太陽系の関係が修復した謎がやっと解けた。どちらが話を先に持ち出したのかわからないが、第3太陽系の植民地化をネタにして和解したのに違いない」 
第6:「話を持ち出したのは第4太陽系のほうだ。その後の分析によると第4太陽系が第3太陽系を植民地化しようとして準備を進めていた。そこに第5太陽系の巨大爆発事件が起こった。第4太陽系のパトロール計画の中に、パトロール員の緊張を保つ為わざとトラブルを引き起こす計画があった。第5太陽系は、〔第4太陽系が計画の失敗と見せかけて故意に爆発させた〕と主張し一触即発の状態になり、第4太陽系は第3太陽系の植民地の話を持ち出したようだ」  
第3:「植民地化の具体的な方法は資料になかったか」 
第6:「色々調査してみたがその資料が見つからなかった。もしかしたら第5太陽系の怒りをしずめるための作り話かも知れない」  
宇宙:「作り話の可能性が高い。我々は第4太陽系の装置も第5太陽系の装置にも工作ができるようになった。巨大爆発と植民地化の話を逆利用し、2つの太陽系を紛争状態にする作戦も考えられる。作戦はすでにある程度考えてある。ただし三政府共同ネット管理部門をなくし、自国の太陽系の装置のパトロール情報は自国のネット管理部門で単独管理する事が前提だ」
第3:「それは可能だろう。今の共同管理は名ばかりで、我々第3太陽系は実質的に外されているし、実質的に第4太陽系が全てを管理していて、第5太陽系のネット管理部門にも不満が溜まっている。『単独管理にしなければ我々はこのシステムから離脱する』と強力に抗議すれば第5太陽系も同調し、第5太陽系とこれ以上の摩擦を避けるため表面上、第4太陽系は折れるだろう。それでも我々は、『今までの事もあり信用できない、また抜け道を作るのに違いない、第5太陽系の巨大爆発も第4太陽系の策略に違いない』と今までのやり方を強烈に非難すれば完全に折れるだろう。第4太陽系にとって他の太陽系の装置の情報はこのパトロースシステムの維持に比べればそれほど重要ではない」 
第6:「急に第3太陽系が強硬な態度に出ても不審に思われないか」 
第3:「その点は大丈夫だ。我々には実際不満が溜まっている。急に不満を爆発させても全く不自然ではない。不満の爆発が大きいほど不自然に思われない」 
宇宙:「第5太陽系の巨大爆発事件は第4太陽系の仕業だ、と、第5太陽系が完全に思い込むようにしよう。この作戦は2つの作戦からなる。何れの作戦も第5太陽系の装置が舞台だ。その装置はネットのルート的に第4太陽系の機密文書保管装置にできるだけ近い位置にあり、装置内に特殊な音が聞こえることが必要だ」 
第3:「装置の中で特殊な音が聞こえる装置なら沢山ある。そのような条件の装置を探す事は容易だが、なぜ特殊な音が聞こえることが必要なのだ」 
宇宙:「調査隊員の頭の中に、その特殊な音をトリガーとし脳に接続された記録装置から脳に記録が移るようにしておくためだ。音のデータは記憶として扱われないので脳内検査に引っかからない」 
第6:「特殊な音をトリガーとして利用するのなら、〔ルート的に近い位置〕を優先して装置を決定し、特殊な音を出す装置は後で取り付ければ良い」

決戦させるための準備

宇宙政府の代表者が、その後の手順を説明していく。

「音の件はそれで解決だ。
調査隊員の脳に接続された記録装置には、第5太陽系の武力弱体化会議のご案内、という簡単な文章を入れておく。調査隊員がその音の聞こえる装置内に入ったらその音がトリガーになり、記録装置の内容が脳に移行する。脳に移行した記録により自分のミッションを知り、会話ボタンを押し、第5太陽系のネット管理室に『この装置の中に中途半端な状態でこのような文章が記録されていた』と報告を行う。
そこで脳に移行してきた『第5太陽系の武力弱体化会議のご案内』というタイトルの文章を読み上げる。無論装置内での記憶は装置から出れば自動消去されるので問題は残らない。
この文書の存在は第5太陽系のネット管理室から政府に連絡され、第5太陽系政府は第4太陽系に対する不信感を募らすだろう。
次の作戦も同様であり、その装置に入ると文書が脳に移行する。調査隊員は会話ボタンを押し、『中途半端な状態でこのような文書が記録されていた』と報告し、その文書は長いので丸ごと転送する。その文書には、タイトルに『第5太陽系弱体化議事録』と記され、内容は暗号文で書かれてあり、添付ファイルが付いている。
すぐに政府に転送され暗号解読器で解読される。解読された議事録には第5太陽系の武器を天体ごと活性化させ、巨大爆発させることを決定した目的と経緯が書いてあり、実際の爆発手順は添付ファイルに有ると、書いてある。
添付ファイルも暗号化され、暗号解読器でいくら解読しようとしても、1から15の数値だけは解読できるが、肝心の内容は解読できないように始めから意味のない文字を入れておく。巨大爆発を起こすための15の手順が書かれている事はわかるが、内容は更に高度に暗号化されているため、第5太陽系の暗号解読技術では解読できなかった事になる。あとは第5太陽系がどう出るかだ。」
 
この説明を受けて、第5太陽系の政府がどのような反応をするか、想定が時系列でまとめられた。

  1. 第5太陽系のどこかの装置から、第5太陽系のネット管理室にパトロール員による報告が入る。内容は、第5太陽系の武力弱体化会議のご案内、というタイトルの文章。インターネットのルート図を調べると、この装置の近くに第4太陽系の機密文書保管室があり、何かのトラブルによりそばにあるこの装置に中途半端な状態で舞い込んだ、と思うだろう。タイトルがタイトルだけに第5太陽系の政府に緊張が走る。
  2. 数日して同じ装置に、中途半端な状態で保管された、〔第5太陽系弱体化議事録〕という中身が暗号化されている文書をパトロール員が見つけ、ネット管理室に転送する。暗号が解読され、第4太陽系が第5太陽系の武器を天体ごと消滅させる計画の議事録であり、決定するに至った経緯や目的も詳しく記載されている。これにより巨大爆発は第4太陽系が故意に行ったと確信する。
  3. 第4太陽系への本格的な報復準備に入る。

第3:「爆発させる事を決定した目的や経緯のストーリーは我々が作成する。我々は第4太陽系と第5太陽系の過去の経緯を全て知っている」 
第6:「音については十分に注意を払おう。第4太陽系のどこかの装置で同じような音がしたら最悪だ。できるだけ複雑な音にしよう」  
第6:「第4太陽系のネット監視室は本当に他の太陽系の情報を盗聴する事はないだろうか。 第4太陽系のことだ。どのような仕掛けがあるかわからない。調べる方法はないだろうか」 
第3:「第3太陽系内の色々な装置から、我々のネット監視室に第4太陽系に不都合な情報を送るのはどうだろう。我々のネット監視室の情報が第4太陽系のネット監視室にもれていれば何らかの反応があるはずだ。どのような不都合な情報にするかが問題だが」 
宇宙:「第4太陽系のネット監視室の主席担当官は第5太陽系のスパイだ、というような情報を暗号も交えて巧妙に作れば良いのでは。もし盗聴されていたら、少なくても一時的には主席担当官から外されるだろう」

 このようにして第4陽系と第5太陽系とを、戦争状態にするためのストーリーは決まり、計画は実行段階に入った。

抗議活動

 第4太陽系のネット管理室のやり方について、第3太陽系政府から第4太陽系政府への強い抗議が始まった。第4太陽系のあいまいな回答に対し、これまでの不満が一挙に爆発し、猛烈な抗議を行った。第5太陽系もこの抗議に加わり、第4太陽系は抗議を受け入れ、各太陽系が独立して管理する事になった。それでもこれまでの不満への一度ついた怒りは納まらず、第3太陽系政府の要人の中に「次に盗聴していることがわかったら第4太陽系を活性爆弾で吹き飛ばす」と主張する者もいた。
第3太陽系の阿部大統領が第4太陽系の上田大統領に「私の力では不満が爆発した強硬分子を抑えることができない。上田大統領自らが第3太陽系に来て説得しないと強硬分子が本当に活性爆弾を撃ちかねない」と連絡した。
大統領の代理として副大統領が第3太陽系を訪れ、今までの非礼を謝罪し、インターネットの管理情報は絶対に盗聴しない旨の文書に署名し、やっと強硬分子の怒りが納まった。計画の障害となるネット管理の問題を解決するための演技だったが、演技するうちに演技に酔いしれ、危機すれすれの演技になってしまった。
第4太陽系のネット管理室が約束を完全実施している事を確認するための第2次作戦が実行され、盗聴問題が完全に解決した事を確認する事ができた。

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