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空調服™開発から生まれた発明品【空調服™ 開発プロジェクト記vo.5】

 空調服™の開発は、画期的な冷涼装置の開発であると同時に、当時の私にとっては新規事業の柱となるような製品開発のアイデアでもありました。ブラウン管テレビの測定装置の開発販売という、古くなりつつある既存事業からの転換の意味合いも大きかったのです。
今後確実に立ち行かなくなるだろう事業からの大きな方針転換という、経営者としての問題に直面しながら、私は「温暖化対策になる画期的な製品」のアイデアについてずっと考えていました。
 ただ、頭の中で考えているだけでは、アイデアが形になることはありません。実際に形にするためには行動に移し、得られた新たな発想や視点からわかったことを次の行動につなげていくのが、ものづくりの基本的なプロセスです。これは発明以外の事柄でも同じことなので、このコラムを読んでいただいている皆様にも似たような経験があると思います。
 そして、そんな過程から新たなアイデアが生まれてくることもたくさんあります。

 私が、まず試してみたのは、涼しく寝られるベットの開発です。寝具は誰でも長時間使うものなのでニーズもあるはずだと考えたのです。
猛暑の夜に寝苦しくなる原因は、体が寝具に接し続けることで熱が溜まることにあります。ならば逆に接する部分を少なくし、体の表面近くの空気が体の表面温度より少し低いままにすれば、理論上はそこから体が持っている熱を放出できて、涼しくなるはずでした。
そして、そのためには体と寝具との間に体の表面温度より低い空気を流す必要がありました。それをどうすればいいのかを、まず実際に試してみることにしました。
 色々と試してみた結果、体と敷き寝具の間に有効な量の空気を流通させるためには1センチの間隔は必要だとの結果となりました。また、この実験結果や考察により空気が流通する断面の空間がいくら大きくても、間に設けた構造材同士の間隔が小さければ想定しただけの空気を流通させられないこともわかりました。つまり市販されている糸の絡みあったクッション材などには実用量の空気を通すことができず、全く新しい体を浮かすための「スペーサー」が必要だとわかったのです。
 ただ、このような理想的なスペーサーは売っているわけがないので、とりあえず手作りすることにしました。
100円ショップと東急ハンズで買ってきた材料で、1センチほど体を浮かすスペーサーを作り、空気の漏れない綿布でくるみ、ゴムレールで確保された風路に空気を流してみたのです。これはかなりいい結果が得られました。この時点で、このスペーサーは実際に人が乗って寝られるほどの大きさではなかったのですが、理論上は涼しいベッドがつくれるはずだということが実感できました。
 あとは完成試作品まで仕上げていくだけでした。この設計原理をもとに、数日かけて試作品を作り上げました。
 試しに寝てみると、メッシュによってゴムレールが体にかかる力が分散され、少し固さはありましたがゴツゴツとするような不快感はありませんでした。そして、何よりも背中に熱が全く溜まらず快適で涼しい寝心地でした。
 その後、このベットは社内にお披露目となり、社内の全員が試しに使ってみましたが、「凄く快適だった」とその評判はとてもいいものでした。ただ、サイズが大きすぎて、当時はすぐに製品化するめどは立ちませんでした。

 この涼しく寝られるベットは結局、空調服™の販売から3年後の2007年に製品化され、現在は『空調ベット™風眠』として販売されることとなりました。「寝苦しさがまったくない」「エアコンが苦手だったので助かる」などご好評頂いています。
 また、このベットの開発で使われることとなった空気を通すためのスペーサー技術は『スーパースペーサー』として、弊社の製品である『クールクッション』や『空調リュック®』にも使われています。

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