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SFB人類の継続的繁栄 第14章『新人類への移行』

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

体を乗り換える新人類への移行と人体の仕様

〔体を乗り換えることのできる新人類への移行〕の実施が決定した。
 実施に向けた第1次アンケートでは、「どのような体を望むか」を複数回答方式で回答するかたちで調査された。また回答欄とは別に、自由意見の書き込み欄も設けた。
アンケートが回収され、意見書き込み欄には、選択する体の仕様とは別の要望も書かれていた。もっとも多い要望は第1世代、第2世代の人類と同じように、男女の性別を設けること、次に多いのは体をマイナーチェンジできる医院を作ることだった。
 性別を設けること、マイナーチェンジ用医院を設けることを前提とした、第2次アンケート調査が行われた。
最初に乗り換える性別は、どちらでも良いが60%、男女がそれぞれ20%ずつだった。また性別が替わった時に自動的に性に合わせた顔や声に変える要望もあった。
マイナーチェンジに関しての最大の関心事は、外観上の年齢を変更できること、それにともない顔や声も年齢に合わせて変更できることだった。
 アンケート調査を受けて、新規に製造する3千万体と今まで使用していた1億体の変更仕様について次のように決定した。なお全てに性別を持たせ、男女の比率は半々とすることも決まった。 
以下は今後の1億3千万体の、各種体の比率である。  

小型女性      10%
小型男性      5%
中型女性      20%
中型男性      20%
大型女性      5%
大型男性      10%
俊敏中型女性    8%
俊敏中型男性    8%
堅牢中型女性    5%
堅牢中型男性    5%
作業用低身長女性  2%

 なお、体の月間の使用料については次のように決められた。中型男女を基準とし、小型を使用する時にはマイナス2万円、大型を使用する時にはプラス2万円、俊敏型、堅牢型の場合にはプラス10万円、作業用小型女性の場合には0円、作業用超大型男性の場合にはプラス30万円とした。 
医院でのマイナーチェンジについては、内容により相場で決めることにした。この場合、大金を使い大幅に変更をしてしまうと、別の体に乗り換えるときにマイナスの差額料金が必要になる場合がある。

 各種ルールが決まり、〔体を乗り換えることのできる新人類への移行〕計画が正式に開始された。
 まず、3000万体の新規の人体が製造された。この3000万体は最も需要の多い中型男性と中型女性にあてられる。 
宇宙に住む1億人との個人契約が開始された。この方式が稼働したら自由に体を乗り換えることが可能になる。しかしその方式を稼働させるには1億体を改造しなければならない。
最初に選ぶ体については、混乱を避ける意味からも標準型である小型女性、小型男性、中型女性、中型男性、大型女性、大型男性の6つの体の中から選択することとされた。現状はいわば試行段階であり、大きな問題や計画を実行した中で見えてきた改善点は次段階での修正が行われることになっている。
契約が進み、希望する体が少なくなると、他の体を選択するように薦められた。後から自由に体を乗り換えることができるので、大きな混乱もなく1億人との契約は終了した。

 ここで新人類への改造内容について説明する。
 小型、中型、大型については文字通り単に体の大きさである。俊敏女性中型、俊敏男性中型、堅牢女性中型、堅牢男性中型は、スポーツ等を楽しんだり、特殊な仕事を行うときに使用する。作業用小型女性は狭所作業などを行うとき、作業用超大型男性は重労働を行う時に使用する。
 性別に関しては、女性は乳房を持ち、男性はがっちりとした体つきで、単に前世代の体形に類似させることだけが決まった。
 性器や性交による快楽については、性別検討委員会が組織され、検討が行われた。
 第1世代の人類や第2世代の人類の記録から、第1世代では男女間の性行為により子供が生まれるようになっていた。
 性行為には快楽を伴う。快楽を伴うので、必然的に性行為を行い、結果として命がつながってきた。第2世代の人類は、性行為と子供の誕生とを切り離し、性行為による快楽は男女間の絆を深めるために残した。
 これに対し第3世代の人類は性別その物が無かった。第3世代の初期には第2世代の人類からのバトンタッチが最重要課題で、そこに向けての使命感から懸命に働き、人口を増加させてきたが、人口の増加につれその使命感は薄れ生きがいを失いつつあった。
 新人類への移行に当たって、前世代の人類にさらに似せるように、また生きがいを増やすために性別を持たせることにした。性別を持たす最大の目的は、男女という家族を作ることであり、家族の絆を深めるために性行為による快楽を設けることは重要だと判断されたのである。
 前世代の人類は性器をもち、交わることが快楽の基だった。性器を作り性交により快楽信号を発生させることは技術的には簡単である。しかし性器は快楽を発生させるための手段であり、最終的には脳の中の反応が快楽になる。脳には性行為快楽ソフトが付加され、男女が性交するとそれにより性行為快楽ソフトが起動し、性行為の激しさに応じて快楽も大きくなる。性器や性的快楽についてはこのような単純な方式に決定され、第3世代の新人類の仕様が最終決定した。
 今後は体を乗り換えられるようになる。性別も乗り換えられるようになる。たとえば男女カップル同士で、体を交換できるようにもなる。したがって最初に使用する体の仕様にあまりこだわる必要はない。
 
 いよいよ宇宙に住む1億人に手術が開始された。手術は脳へのソフトウエアの追加と、体の交換が必要であり、次のような手順で行われた。

1. 契約した体をあらかじめ用意する。
2. 元の体から脳を取り出し、その体に脳を移植する。
3. 記憶書き換え通信機能を追加する。
4. 性別等の新機能についてのソフトウエアを追加・変更する。
5. 基の本人と全く同じ顔と声を持たす。
6. 空になった体は回収し、別の体に改造して使用する。

 このようにして、1億人の体は2年がかりで〔乗り換えられる、性別のある新仕様〕の体に変更されていく。
   

宇宙に暮らす1億人の手術が完了し新人類へ

 宇宙に暮らす1億人の手術が完了し、第3世代の新人類の生活がスタートした。外観上の年齢は一律30歳で、性別が設けられ、男女50%の比率となった。
体形も、中型の人、小型、大型の人もいて、第3世代初期の単純さからは、大幅に改善された。
新たな身体になったとはいえ、住居と仕事はそのまま引き継がれた。
 多くの人は、顔も声も同じで、体つきも同じなので、手術後の違和感は少なかったが、性別が与えられたことには大きな変化を感じた。
結婚に備えて戸籍制度が制定された。性別を設け、脳もそれに対応してチューニングされ、男女は互いに意識するようになり、多くの人々がかつての人類では当たり前に行われていた結婚という営みを体験することとなった。

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