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SFB人類の継続的繁栄 第20章『消滅のとき』

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

21世紀技術者のメモ

 21世紀初頭、ある技術者が〔宇宙の進化と次のビッグバン〕という表題の、次のようなメモを残していた。 


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宇宙の進化と次のビッグバン

ビッグバン後の宇宙は100分の1秒後には大量の光子、ニュートリノ、電子、少量の陽子、中性子が混ぜこぜになっていて、宇宙が膨張して冷えていくと、水素やヘリウムの原子核ができて、その後は水素やヘリウム原子ができ、次にもっと複雑な原子ができ、分子ができ、無機物ができ、一部の宇宙空間に有機物ができ、一部の惑星に自己コピー機能を持った物質ができ、地球に生物が誕生し、脳を有する動物が誕生し、人間が誕生した。
このようにビッグバン後、時間の経過と共に宇宙は複雑化し、その複雑化のなかに人類が誕生した。これらはみな宇宙の大原理の中での出来事であり、人類は特殊な存在とはいえても、その大原理から抜け出た特別なものでは決してない。
自己コピー機能を持った物質が出現したことにより、生命の進化が開始し、その結果として出現した人類は技術を持ち、その技術が進展しすぎ、ことは大いに複雑になり、あまりにも複雑になりすぎたため、次のステップとして何が起こっても不思議でない。
ややSF的になるが、この先のストーリーは、「もし人の脳を改良することが倫理的に許されるようになったら」、あるいは「自分自身を改良する能力を有するロボットができたら」、あるいは「自分の能力を改良して、自分の2倍の能力を有する次世代のロボットを作ることができるロボットができたら」(この場合20世代目には約100万倍の能力になる)、技術膨張のビッグバンが起こり、その先どのようなことが起きてもおかしくない。
宇宙のビッグバンの後、次々に複雑な物質が誕生し、ついに人類の誕生に至ったが、各段階で次に移行する直前の状態を臨界状態とよぶとすると、今まさに臨界状態で、この先100年か200年の間に何が起こるかわからないが、そこには知的生命が関与していることだけは確かだ。宇宙は、時間とともに複雑さを増す方向に進化し続けるようだ。

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 この技術者のメモは第1世代の末期の21世紀初頭に書かれ、「この先100年か200年の間に知的生命が関与した宇宙単位でのどのような出来事が起こるかわからない」と記されていた。
第1世代の人類は、技術が急加速する、いわば技術のビッグバンによる自滅を避けるためもあり第2世代の人類へと移行し、第2世代の人類は危険技術の進展を止めることにより小惑星の衝突の日まで長きに渡って繁栄した。

第3暦1900年 太陽系の喪失

 ついにその日がきた。重さ1キログラム程の隕石が地球に落下し、それが引き金となり地球全体がエネルギーに変換した。この宇宙誕生後の最大級のエネルギー放出かもしれない。太陽系全体が消滅してしまった。
 無論、地球上の生物は全て絶滅した。
 

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