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SFG人類の継続的繁栄 第1章『孤立天体での高知能検証実験』

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

第3太陽系は技術大国を目指す

 第3太陽系は、第4太陽系の政府の支配下に自治政府が設けられ、阿部氏が自治政府の大統領である。第3太陽系にはかつて微小生物と共生し、神業の力を持った者や、微小生物と一体化しスーパー人を経験した人たちが大勢いる。阿部政権はこれらの人々も政府や重要機関に採用し和解を進めてきた。
 第5暦3500年、政府は、微小生物と共存した時の様子を詳しく記録に残すために、〔高知能検証プロジェクト〕を発足させた。
プロジェクトのメンバーには、当時、微小生物と共生した人たちも多く参加していた。共生関係にあった時の状態や、一体化してスーパー人になった時の状態も詳しく調査し、報告書がまとめられた。
その報告書によると、微小生物と共存した事によるマイナスの側面はほとんどなく、プラスの側面のほうがずっと多いことがわかった。
 人類の継続的繁栄という理念の下、人類の知能には手を加える事を禁止していたが、微小生物の共生により高知能の思わぬ体験をして、知能が高いことは必ずしもマイナスの要素だけではないと思うようになってきた。
 現に知能に手をつけてない第4惑星の人類は、活性爆弾を開発し、第4太陽系周辺の多くの天体を破壊しまくり、ある意味では宇宙にとって非常に危険な存在となっている。 一方で知能の非常に高い微小生物は満足度を最大にして静かに暮らし、宇宙にとって安全な存在である。
 阿部政権は第4太陽系には報告せずに、高知能についての実験を行う事にした。人の知能を大幅に上げた場合、どの様な事が起こるかの実験である。この実験は移動基地の設置を禁じた孤立した小さな天体、〔孤立天体〕で行う事にした。万一、知能を高めた新人類が問題を起こす場合を考慮して、完全に孤立した天体で行うように計画した。
計画は次のように策定された。

  1. 実験参加者を1000人募集する。
  2. 第3地球に置いたプロジェクトチームの担当者が常に監視できるように、1000人の応募者の脳には脳内監視装置を取り付け、体には送信機を取り付ける。
  3. 大型宇宙船に実験参加者1000人、カーボン変成機、質量電池、半導体製造装置、その他人類の生活に必要な装置や、脳の材料として必要な各種貴重物質を乗せ、孤立天体に運び、宇宙船は引き返す。
  4. 自分達の住宅や生活に必要なインフラを整備する。
  5. 実験開始後に、孤立天体との往来が必要な時は、専用の宇宙船1隻のみを使用する。

 計画に沿って実験が開始された。実験参加者は早速、自分達の脳を改良するための半導体チップの生産を開始する。メモリーチップを中心に必要な各種チップを大量に生産した。とりあえず記憶と計算スピードという、単純な部分から試みる事になり、被験者を募集した。5人が実験台として手をあげた。他のソフトはそのままにして、計算と記憶に関する部分だけを変更する事にして、チップの大量追加手術が行われた。
 1週間の経過観察が行われた。大幅に記憶力は増強し、頭の回転が速くなったが、思考力が頭の回転に追いつかず、予想通り単に知能指数が上がっただけだった。
思考力と頭の回転をリンクする部分のソフトの改良とハードの追加を繰り返し、彼らの知能は大幅に向上した。一連の手術による、負の要素の発生も見られなかった。
 残りの全員に同じ手術がほどこされ、全員の知能が大幅に向上した。大幅に向上した頭を駆使し、次々と改良案が提案され、実験を行いながらさらなる知能の向上が行われた。知能向上のために必要な設備も続々開発し、知能向上が加速してきた。

プロジェクトへの懸念

この様子を遠隔脳内監視していたプロジェクトのメンバーは、順調に行っている事に満足しながらも、知能向上の予想以上のスピードにある種の危惧を抱いた。
圧倒的に知能が向上した彼らは、知能向上の様子をありのままに監視されるのは、監視しているプロジェクトのメンバーに危惧を与えると考え、実際の知能向上のスピードよりずっと遅く見えるように監視部のソフトを変更した。監視しているプロジェクトのメンバーは知能向上のスピードが減速してきた事に安堵した。
さらに知能の改良を図りつつ、脳の各部位の切り分け作業に手をつけた。脳を、圧倒的な知能を有する思考部と、体をいわばロボットとして制御する人体制御部と、監視装置につながる監視部に切り分け、監視部にはダミーデーター発生脳を設け、監視しているプロジェクトのメンバーが危惧を抱かないようにして、思考部の能力向上を大幅に加速した。
 同時に、人体についても次のような大幅な改造も行った。

  1. 大幅な人体の強化
  2. 筋力の大幅な強化
  3. 超小型質量電池の埋め込み

 一方、面状分布センサーなど、快楽につながるところは廃止した。 結局人体については、外観は普通の人体だが、強力で且つ充電を必要としないロボットにした。
 第3地球のプロジェクトの担当者は、監視カメラで彼らの動きを常時モニターしていた。今まで活発に行動していた彼らの行動が急に緩慢になってきた。しばらくして彼らは動きを停止してしまった。しかし彼らの脳内監視データでは活発に動いていた。動かなくなった彼らの体を詳細に観察すると、明らかに強化改造されていた。
急遽メンバーが招集され会議が開かれた。

「脳内監視データでは彼らは活発に動いているが、監視カメラでは彼らの動きは停止して眠っている。人体は大幅に強化改良されたようだ」
「監視カメラと脳内監視データのどちらが本当なのだろうか」
「監視カメラが本当だろう。監視カメラを操作して、寝ている様子を我々に見せる必要はない。脳内監視データが偽物だ」

思わぬ結果

 急きょ脳内監視データが詳しく分析され、偽物だと判明した。

「脳内監視データはやはり偽物だ。何で彼らは寝ているのだ」
「微小生物と同じだ。チップを超高密度化し脳の思考部分に多量に使い知能を高くした。知能が高くなりすぎたため、満足度を最大にして寝てしまったようだ。人体を強化したのは防衛のためだ。いざとなったらロボットとなった強力な人体で戦うつもりたったのだろう」
「この始末はどうすれば良いのか。下手に捉えようとすると彼らにやられてしまう。このまま放置した方が良いだろうか」
「彼らがこのようになった原因の調査が必要だ。彼らに気付かられずにそっと行き、一斉に取り押さえるしか方法はない」

 こうして、実験体たちを取り押さえるための強力なシートが製造された。そして捕獲部隊は念の為、巨大な人体も引き連れて、大型宇宙船数隻で孤立天体に静かに降り立った。
部隊は寝ている彼らにそっと近づいて1人ずつシートをかけて取り押さえ、すぐにスイッチを切っていく。危惧していたような戦闘などにはならず、捕獲は無事に完了した。
 しかしながら、部隊の任務はそれだけでは終わらなかった。孤立天体のあちこちで、見たこともない装置が沢山見つかったからである。これらの装置は1000体のロボットとなった強力な人体とともに宇宙船に載せられ、第3地球に運ばれた。
高知能検証プロジェクトのメンバーは、強力な人体と沢山の装置類の調査を行った。装置類の調査には各方面の技術者も加わった。彼らには理解できない技術が沢山使用されていた。
長時間かけて分析が行われた結果、そこで使われている技術は今までに考えられたものよりもはるかに優れたものであった。また、人体についても同様に貴重な技術を入手された。中でも人体に埋蔵されていた、超小型の質量電池は今後の人体製造上への最も画期的な成果だった。
 脳についてはメンバーが予測していた通りだった。人類の脳の1000倍の量が微小なチップに集積されていた。
 応募した1000人の記憶は当然記憶記録装置に保存されていた。新たに用意した人体に保存された記憶が書き込まれ、応募者全員が目を覚ました。彼らには詳細な説明は行わずに、実験が終了し、貴重なデータが取得できた事だけを説明された。

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