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SFB人類の継続的繁栄 第12章補足資料『第1居住棟』

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

第1居住棟建造の様子

 第1居住棟は、地表面と平行な半径50m、高さ10mの円盤状で、回転により遠心力を発生させるように計画された。円盤の側部では1Gの遠心力が働き、中央に行くにつれ遠心力は弱まり中央部は無重力である。
 バッテリーなどの重量物は中央に設置され、居住領域は半径20mmより外側の、ある程度の遠心力が働く領域に設けられる。宇宙エレベーター用の第3次宇宙基地との根本的な違いは、遠心力を得るために回転していること、エレベーター機能がないこと、の2点であり、強力なメインワイヤにより、地上の強力なアンカーとつながっている点、カウンターウエイトが設けられている点は同じである。
 第3世代の人類は真空中で生活できるので、居住棟は機密性を必要とせず、大きさの割には軽量な建造物である。円盤の上面にはソーラーパネルを敷き詰めて、居住棟の恒久電源として使用する。

 第1居住棟建設にあたり、宇宙で働く隊員を増員しなくてはならない。第3次宇宙基地に収容できる隊員は50名が限度である。まずは300名を収容できる仮設住居が必要である。仮設住居といっても睡眠を取るだけのものであり、第3次宇宙基地に比べて小さな建造物である。仮設住居は第3次宇宙基地に隣接して建造される。仮設住居は廊下の役目を果たす〔廊下プレート〕により、第3次宇宙基地のプラットホームに接続される。 
 今までは30名の隊員がプラットホームで作業していた。隊員は宇宙に放出されないように命綱によりプラットホームにつながれていた。30名でも命綱が絡まる事故が多発していた。今後300名もの隊員が、命綱を付けて作業するのは現実的でない。そこで磁力を使うことにした。 
 まずプラットホームと廊下プレートの表面に磁化加工を施し、隊員の靴底には随時強度が調整できる磁石を取り付けることにした。これにより命綱から開放され、作業効率は大幅に向上する。しかしながら作業中に靴底がプラットホームから離れて、宇宙に放出される事故は十分に考えられる。この対策として網捕獲砲が開発された。
 網捕獲砲は、宇宙を浮遊している隊員めがけて網を発射する装置であり、網により隊員を捕らえプラットホームに引き戻すものである。しかしながら命中精度を考えると100mが限界であり、それ以上にプラットホームから離れてしまった隊員を救助することは不可能である。この対策として、緊急時のみに使用する小型ロケットも装備することにした。
この計画に沿い、小型ロケットと網捕獲砲が荷揚げされた。プラットホームと廊下プレートに磁化処理が行われ、隊員の靴底にはマグネットが取り付けられた。これにより隊員はやっと命綱から解放された。

 仮設住居ができあがり、まず200名の新規隊員が40名ずつ、宇宙エレベーターで第3次宇宙基地に到着した。
 第1居住棟建造の最大の難関は約3万6000kmのメインワイヤの荷揚げである。第3次宇宙基地まではメインワイヤは細かったので、ワイヤ同士の連結が可能だったが、第1居住棟の場合は、強度上途中で連結することは困難である。
 第1居住棟のメインワイヤの総重量は、最新のカーボン変成技術を使用しても300トンを下らない。荷揚げ能力2トンのエレベーターで300トンのメインワイヤを荷揚げすることは不可能である。そのためメインワイヤは第3次宇宙基地のプラットホームで製造することにした。
 この目的に特化したワイヤ変成専用のカーボン変成機が開発された。専用のカーボン変成機が荷揚げされ、左側の作業場に仮置きされた。一方右側の作業場の中央には直径1cmの孔が開けられ、その孔を中心とした半径4mの円が描かれた。
 左側の作業場に仮置きされたカーボン変成機は、開けられた孔とノズルの位置を合わせて、右側の作業場に据え付けられた。
ワイヤの材料となるカーボンを2トン単位で荷揚げし、カーボン変成機に投入し、超高強度ワイヤに変成し、ノズルから孔を貫通して、地上までメインワイヤを連続して製造するように計画されていた。 
 この計画に沿って、メインワイヤは1年かけて製造された。メインワイヤの製造に1年も要した最大の原因はエレベーターの速度である。第3次宇宙エレベーターの速度は平均時速2000kmであり、引き上げは片道だけでも18時間を要する。カーボン2トンの荷揚げに2日もかかってしまうからである。

 メインワイヤの製造が終了すると、カーボン変成機は作業場の隅に移された。
 直径1cmの孔と貫通したメインワイヤとの間には、メインワイヤスライド装置が設置された。メインワイヤの宇宙側の端部にはカウンターウエイト収納用の網がくくりつけられた。
左側の作業場では、第1居住棟の最重要部である半径4m、厚さ20cmの中央円板の組立作業が開始された。中心に孔が開けられた直径1mの中央部品と18個の扇状部材が連結され、中央円板が完成した。
 中央円板は右側の作業場中央に、メインワイヤを貫通して据え付けられ、作業場のプレートと強固に接着された。

 宇宙からメインワイヤが地上に到達した。メインワイヤをアンカー杭に連結し、地上のアンカー杭と静止軌道上の第1居住棟の中央円板が、メインワイヤによりつながった。
第1居住棟の本格的な設営作業が再開された。
 右側の作業場に強固に接着された中央円板の切り離し作業が始まった。作業場の床に描かれた半径4mの円に沿って、専用カッターにより作業場の床ごと中央円板が切り離された。
 カウンターウエイトを引き下げ、中央円板上に固定し、第1居住棟の基礎となる中央円板を第3次宇宙基地から床毎下へ引き抜く準備は完了した(図A)。
 地上基地ではメインワイヤをゆっくりと巻き取り始めた。 
 第3次宇宙基地のプラットホームから、切り離された中央円板がゆっくりと下方に引き抜かれ、プラットホームの底から10m下方まで移動した(図B)。
 地上のアンカー杭とメインワイヤでつながった中央円板は、ロケットエンジンによりゆっくりと東に移動した。
 第3次宇宙基地から100m移動した所で、カウンターウエイトは上空に戻され、同時に地上では巻き取ったメインワイヤをゆっくりと巻き戻し、中央円板は再び第3次宇宙基地と同じ高さまで戻された(図C)。


プラットホームから中央円板を引き抜き作業

 ロケットエンジンの出力を停止し、中央円板は慣性によりゆっくりと東に動き続けた。ロケットエンジンの向きを変え出力を調整しながら、第3次宇宙基地から5km離れた予定位置に設置された。

 円盤状の居住棟の底板となる、半径50mの円板の組立作業が開始された。
 中央円板に接する36個の第1外周パーツが荷揚げされ、5km先の中央円板付近まで運ばれ、中央円板を取り囲むように円状に配置され、36個の第1外側パーツが連結された。同様に第2外週パーツ、第3外周パーツが連結され、半径50mの第1住居棟の底板が完成した。
 半径50mの底板の上に各種部材が運ばれ、組みつけられ、各種設備が据え付けられ、5年がかりで第1居住棟は完成した。
 姿勢制御エンジンにより、第1居住棟はゆっくりとした回転し、遠心力が発生し、人が床の上で生活できるようになった。
 

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