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人類とエネルギー

 地球温暖化問題を考える上で、それを解決するための方法はこれまでもいくつも提案されてきました。そして、それらのほとんどに共通しているのは二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスを増やさないという目的を、いかに達成するかという部分です。
 2015年に締結された地球温暖化対策のための国際的な取り決め、いわゆるパリ協定を見ても、温室効果ガスの削減目標の設定と達成がその主旨であるといえるでしょう。ただ、その前段となった京都議定書も含め、その方法については各国に委ねられています。その結果、削減量の売買というような本質からは少し外れた話も出てくるような状況が生まれることにもなりました。
人類はこれまで温室効果ガスを対価として熱エネルギーを得ていました。主に火を使って食事を作ったり、暖を取ったりするためのものです。もちろん金属やセラミック類を製造するためにも使ってきましたが、現在に比べればごくわずかなものです。何かを動かすのは人や家畜のエネルギーが主であり、そのほかには水流や風、太陽光、そして重力といった自然界にあるエネルギーをその仕組を厳密には理解しないまでも人類は利用してきたのです。
 ターニングポイントとなったのは、この何かを動かすために熱エネルギーを使うようになったことでした。ご存知のように蒸気機関の実用化によって産業革命は起こり、その後の内燃機関や発電といった世界を大きく変えるような画期的な技術も、同じように熱エネルギーを別のエネルギーに変えるものでした。地球温暖化問題を考える上で、エネルギーについて考えなければならないのはこういった事情があるのはいうまでもないでしょう。
 地球温暖化問題を解決する方法を考える上で、私が取っ掛かりとしてアプローチしたのも、このエネルギーについての思考実験でした。
使用前の電池と使用後の電池の質量の変化は現在の技術でも測定不可能だといいましたが(リンク「取り留めのない思考が人を育む」)、これは裏を返せばわずかな質量から莫大なエネルギーを取り出せるということでもあります。現状、最も効率よくエネルギーを取り出す技術は原子力ですが、原子力より効率よくエネルギーを取り出せないかということを考えました。理論上これが実現できれば、温室効果ガスを削減どころか既存のエネルギー問題をほぼ解決できてしまいます。
 まず、私は質量がエネルギーに変換される場合の変換率について整理しました。
現在の技術で実現しているのは、バネなどにエネルギーを蓄える、ほとんど質量変化を伴わないもの。これを第一領域とします。次に、電池や燃焼などの化学変化による計測不能な程度の質量変化を伴うもの。これを第二領域としました。そして、原子力などの計測可能ですが質量変換率の小さなもの。これが第三領域であり、ここまでが現在、人類が実現している技術になります。
ここからは可能性の話になりますが、もっと質量変換率を大きくできればそれは第四領域となります。最も質量の小さい水素を使う核融合炉が実現されれば、重いウランを使う核分裂の技術よりも当然質量変換率は上がりますので、ここに含めてもいいかもしれません。あと20年から30年後には実現するといわれていますが、果たしてどうなるでしょうか。
 そして理論上は質量を全てエネルギーに変える、つまり変換率100%の技術も第五領域があるかもしれないことに気がつきました。これは対消滅とか反物質といった、SF小説などに出てくるような現象や物質の領域の話です。少なくとも第四領域以降の技術の実現については原理や可能性はつかめても、実現ということになると私の手には負えない領域であることも分かりました。

 そこで私は新しいエネルギーについての思考実験はここまでにして、別の方法で地球温暖化を防止することはできないか。そんな思考実験に切り替えることにしたのです。

『空調服™を生み出した市ヶ谷弘司の思考実験』より

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